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“逃げたい”
そう言ったら、言ってしまったら、自分の中で何かに負けてしまうような気がして一度も口にすることはできなかった。そもそも一体何から逃げたいのかもよく分かっていないし、よく分からないから面倒なんだろうなと思う。
そんなことを考えながら、ゆっくり吐いた息と床に伸ばした足を見て、Aは何を思ったのか。
練習後のストレッチを終えて、顔を上げたら目の前に胡座をかいたAがいた。
じーっと自分の顔をただただ見つめている。
SC｢…どうした？」
｢いや、特に何も」
最近、やたらとAが忙しくしているとシュアが言っていた。
元々、ウジと一緒に作曲だとか作詞だとか、プロデュースに関わる活動をしていたし、忙しいなんて今に始まったことじゃない。
申し訳ないけど、メンバーたちだってお互いにそれには見慣れてしまった。
でも、最近はそれよりも忙しくしている気がするとシュアが言う。何でも、オフの日は基本的に外に出ようとしないAが朝から晩までいないことが結構あるらしい。
SC｢みんなと帰ったんじゃなかったのか」
｢あとから帰るって言っておいた」
SC｢なに。タクシーで？」
｢まあ、どうにかして」
SC｢どうにか、って…」
｢歩ける距離ではあるし」
SC｢危ないだろ」
｢そしたら友人でも呼ぶから」
SC｢そんな友達いるのか？」
｢失礼だな」
秘密主義ってほどではなくても、Aは隠し事が多いと思う。
隠し事というか“言うべきこと”と“そうでないこと”の境目が曖昧で、「聞いてない」と言えば、「聞かれていない」とほんの一握りの悪気さえないようにそう言ってくる。
デビュー前もその後も今まで何度この会話を繰り返したか分からない。今だって、その迎えに来てくれるほどの友人を自分は知らないし。
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柊(プロフ) - ぴょんさん» コメントありがとうございます。自分の文章にそう言ってもらえてすごく嬉しいです！こちらこそこれからもよろしくお願いします☺︎ (2022年9月26日 9時) (
レス) id: 1c5041063e (このIDを非表示/違反報告)
ぴょん(プロフ) - すごく深みのある文章で、読み応えがあります。とても面白い小説を生み出して下さりありがとうございます。これからも更新楽しみにしております(><)♡ (2022年9月26日 0時) (レス) id: 0051795449 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：柊
| 作成日時：2022年9月23日 17時
