弍拾伍 ページ27
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(※『業物語』が入ります。)
C「御前達はAと呼んでいるが、彼奴の名前は、スカーレット・カタルシス・ジェネシスだ。彼奴が未だ『うつくし姫』だった頃に、俺様が付けてやった。
C「あの頃のスカーレットは、自分の何もかもを嫌い、恨み、疲れ切って居た。体のあちこちに傷が有った。其れらは全て、彼奴が自分で付けたものだった。
C「美しさで人を殺すなんざ、化物だと思ったさ、俺様も。
C「──もう、400年以上も前の話だ。
────肆佰年前────
如何やら、又死んで仕舞ったらしい。
目を開くと、直ぐ其処に、其奴は居た。
倒れている俺様を、あろうことか彼女は、膝枕している様だった──亡国の美女。
俺様の其れに引けを取らない、俺様の其れよりも美しいと認めざるを得ない、烏羽色の髪。
宵色の瞳。
其の美しさも素晴らしいが、此の俺様を膝枕する其の度胸も素晴らしい──何故なら、俺様は先程まで、死んでいたのだから。
『大丈夫ですか?』
そう問う声も、とことん優しげだった。
とは云え俺様は美女の膝枕を堪能する趣味は無かったので、上身を起こした。そして生き返りたてでぼんやりする頭を掻き、云った。
「俺様はどの位の間、死んでいた?」
『...死んでいたのは数刻です。そして貴方を殺したのは、貴方自身です。』
如何やら質問の意図を汲んでくれたらしく、訊いていない事まで答えてくれた。
だが、訳が解らん。
俺様自身?
『貴方は自 殺したのです。』
益々解らなく為った。
如何にも怪訝そうな俺様の反応を受けて、
『貴方が如何して私を殺そうとするのか、其れなりの理由はあるのでしょうけれど、どうか思い留まって下さい。折角生き返った命を、無駄にしないで下さい。』
と美女は続けた。
漸く冴えて来た頭のお陰で、漸く意味が解った。
「つまり、あれか──俺様は貴様の美しさを傷付ける事を躊躇うどころか、そんな暴挙に及ぼうとした自分が許せず、自 殺したって訳か。」
『そう云う事です。』
「かかっ」
声に出して笑うなど、何年振りだろうか。
『御名前を伺っても宜しいですか?』
「嗚呼。
決死にして必死にして万死の吸血鬼、
クレセント・カタストロフィ・インフィニティだ」
此れが、不幸とも呼べる、スカーレットとの出会い──出遭いだった。
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作者名:妃薫。 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nakaharaty1/
作成日時:2018年3月12日 1時