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弐拾参 ページ25











「好い加減に自分の罪を認めろよ、俺の先祖に詫びろよ、世界に詫びろよ」




言葉が出ない。何も言えない。




「――このまま、死ねよ」






水、炎、土、色々なものが一斉に襲い掛かってくる。中原が咄嗟に向かうも、間に合わない。






それらが妃薫の躰に直撃し――――――――。








馬鹿みたい( 、、、、、)



木端微塵となった妃薫の躰は、元に戻っていた。





『取り乱したって、何も変わらないのに。今までに何度かあったなぁ、こういう事。今更何とも思わないはずなのに、最近は普通に幸せだったから、すっかり忘れてた』

「……は?」


『伊邪那弥の生き残りさん。あの三日間の事に関しては、謝るよ。御免なさい』





深々と頭を下げる妃薫に対し、男は愚か、中原も唖然とした。





『でもまぁ、謝ったからって、命が戻る訳でもないしさ……だから、普段私は謝罪をしないの。意味が無いから』




妃薫が一歩、前に足を踏み出した。

男は顔を引き攣らせ、後退る。






『有難う。あんたのお陰で思い出せたよ。自分が何者なのか。自分がどういう存在なのか。

私、最近全然食べてない( 、、、、、)んだァ』






口角を上げる妃薫。






『だから、さ――――有り難く貰うね。その命』

「――――」







刹那、

妃薫は男の首筋に、噛み付いた。








吸血鬼。それは文字通り、人の血肉を喰らう怪異である。


妃薫の主食は本来、人間なのだ( 、、、、、)








妃薫の髪が、艶やかな黒髪から眩しい程の金髪に変わって行く。肌は更に白くなり、瞳は黄金の様に輝く金色に。


人を喰らう、何よりも美しい“鬼”――――それを間近で見た中原は、不覚にも、その神々しくもある姿に見蕩れた。








『御免なさい。――安らかに眠ってね』







男の躰が、霧散した。









空を覆っていた雲が晴れ、太陽の光が辺りを照らす。








口元の深紅を手で拭う彼女は、恐ろしくも美しく、またその悲哀に満ちた表情は、泣き出す寸前の子供の様であった。

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作者名:妃薫。 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nakaharaty1/  
作成日時:2018年3月12日 1時

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