僕っ子アーヤは知っている

家での生活 ページ7

「じゃあな、彩斗！」

「うん、またね！」




お互いに手を振り、友達と別れた。

そして、家の扉を優しく押す。



「……ただいま。」

「彩斗、お帰りなさい。
　テストはどうだった？」



冷淡の話すこの女性は僕の母。


「今日のテストもいつも通り良かったよ。
　あとで見せるね。」

「あっそ。」




僕の母は僕に興味がない。



僕には、将来は東大生と言われている兄が居る。

それに、愛想がよくて可愛い妹も。





僕が持っているものは、必ず兄弟が持っている。

決して、母は僕を見なかった。





挙げ句の果てに、僕の実力を全て兄や妹のおかげと思うようになったんだ。





勉強が出来るのは兄が教えてくれたから。

本当は、一度も教えてくれたことなんて無かったのに。



友達がたくさん居るのは、奈子の愛想の見様見真似。

奈子が生まれる前から、友達はたくさん居たのに。





多分母は僕が嫌いなんだと思う。


それは僕が出来過ぎる子だから。



欠点がない、とでも言う。




僕はなんでもこなした。

母が出来ないことも、出来ることも、その上を平然としてやってこなした。




母は、自分よりも僕の方が地位を上に感じたんだ。

プライドの高い母は、それ故に冷たい態度を取る。





正直、胸が痛かった。

母が自分を邪魔に思っていることを知った時は特に。




でも、言い訳をして良いならば、僕は母の望むがままになっただけなんだ。





母は言った。

“勉強で一位を取れるような子になりなさい”

僕は、難解小学校の入試テストを主席で合格した。




母は言った。

“運動を出来るような子になりなさい”

僕は、マラソン大会で一位を取った。




母は言った。

“人を笑わせる人になりなさい”

僕は、流行を調べて、それに乗り、人気者になった。




母は言った。

“優しく、素直な人になりなさい”

僕は、何度も友達を庇って、怒られてきた。

でも、自分がしたミスは、必ず先生に自ら伝えた。







全部、全部、全部。

母が言ったことなのに。



どうして、僕を避けるの？嫌うの？


母が言ったことに従っただけなんだよ。







父は言った。

“もっと自分らしく、リラックスしなさい”


自分らしく？


“ママの言う通りにならないで良いんだよ”


違うよ、これが僕なんだ。


“彩斗、ママの束縛から自由になるんだ”



束縛？そんなわけないよ。

これはきっとママから僕への愛なんだ。


ねえ、みんなもそう思うでしょ？

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