【Q|K】今日、家族が増えた。【all】

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彼が気を遣って俺とAちゃん二人の時間を作ってくれようとしてるのには、なんとなく気づいていた。
だけど俺は、気付いてても頷けなかった。Aちゃんに目を逸らされるのが、どうしても怖かったから。



「こうちゃんって真面目だよねぇ」

「……なんですか急に」

「いや？思ったことそのまま口にしただけだけど」



俺のこれは、真面目とかそういう類いのものなのだろうか。ただのチキン野郎としか思えないのだが。
酷い割れ方をした箸でアジのフライを口に運ぶ。何気なく見た外は、梅雨の時期らしい大雨だった。







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「……なにしてんだろ、俺」



またのお越しをお待ちしております。そんなテンプレを背中に受けながら、持っていた白い箱を目線の高さまで持ち上げる。箱の側面には金色のセリフ体で、有名なケーキ屋さんの名前が記されていた。

六月と言うと山本さん達の誕生日があるが、彼等の誕生日はもう祝い終わっている。というかそもそも誕生日ケーキではない。
じゃあなんのためのケーキかという話になるのだが、簡単に言えば、きっかけ作りだ。


伊沢さんが作ってくれたきっかけで駄目ならば、自分で作るしかない。今までは無装備で強行突破するという脳筋のようなことをしてしまっていたが、流石に俺も学んだ。装備ってやっぱ大事。うん。



「アレルギーとかだったらどうしよ」



ただまぁそれがそう簡単に行くかと聞かれればそう言うわけでもなく。

俺は本当に、Aちゃんのことをなにも知らない。
いつも遠目からメンバーの人達と絡んでいるAちゃんを眺めているだけで、会話の内容も殆ど聞こえないし、何が好きで何が苦手なのかも、二ヶ月経った今ですら知らないのだ。


もしかしたら今日買ったケーキが嫌いという可能性もあるし、食べられないという可能性もある。事前に誰かに確認を取れば良かったのだが、なんだかそれも気恥ずかしくて、結局独断と偏見で無難なショートケーキをお買い上げしてしまっていた。


……まぁ、なにか問題があったら、その時はその時どうにかしよう。今日は一先ず、Aちゃんと少しでも会話が出来れば上出来だ。







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