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「なぁ、こうちゃん」

「へっ、あ、はい」



巡らせていた思考をぶったぎるように伊沢さんが突然声を上げ、思わず素っ頓狂な声が飛び出す。いつもならここでなにかしらおちょくってくる彼だが、今日だけはなにも言ってこなかった。



「……ありがとな」



代わりに投げ掛けられたのは、そんな感謝の言葉で。感謝されるようなことをした覚えがない俺は感情のまま、眉を潜めて首を傾げる。
何を言ってるんだ、伊沢さんは。俺は、俺には……責められるようなことしか、ないのに。



「こうちゃんに言われて、改めてちゃんと冷静になって考えられたわ」

「い、いや、そんな……俺はただ、伊沢さんに、酷いこと言っただけで……」

「まぁ確かに自己満足だろって言われたときはこたえたけど……でも、そのお陰で、やっと決心できた」



___俺さ、ちゃんとこうちゃん達やこの子に認めてもらえるような、立派な父親になってみせるよ。



そう言って歯を見せて笑う彼に、あぁ、と先程福良さんに言われた言葉が脳裏に甦る。良くも悪くも、子供。確かに今の彼の笑顔は、無邪気な子供の笑顔とそう変わりはなかった。
子供だからこそ、彼はこうして何でも吸収できる。気まずいであろう俺に対しても、笑顔で決意表明をしてくれる。ただ逃げるのではなく、しっかりと向き合うことが出来る。

なのに俺は……探しに行くことなく、逃げた。



「うっ……うぅっ……」

「え、ちょ、こうちゃんなに泣いてんだよ?!泣くとこじゃねぇだろ!あーあー、ったく、ほら、こうちゃんも元気出せって!な、もう大丈夫だから」



後頭部に腕を回され、雨水を吸い込んで冷たい衣類に額を押し付けられる。冷たいはずなのに触れた彼の体は確かに暖かくて、彼の腕に抱かれていたAちゃんもまた、暖かかった。

俺がしたことは、謝っても、許されないことかもしれない。それでも、もし、彼が許してくれるというのなら……


___俺も、この子の成長を近くで、見届けたい。








《第四節へ》

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白菜(プロフ) - 凛花さん» 気づくのが遅くなってしまってすみません!イラスト気づいて頂けましたか……!ご想像通りの八神ちゃんが描けていたみたいで良かったです!! (2020年8月26日 22時) (レス) id: 367472b3a3 (このIDを非表示/違反報告)
凛花 - イラスト…イラストが…!!もう八神ちゃんですね…可愛い…私の想像した八神ちゃんだ…尊い…(語彙力低下) (2020年8月14日 23時) (レス) id: 0e33e6ca02 (このIDを非表示/違反報告)
白菜(プロフ) - るるあ。さん» ご指摘ありがとうございます!キーボードが押せてなかったのかもしれません…早急に直させて頂きました!るるあさんも体調管理には十分にお気をつけて! (2020年8月8日 19時) (レス) id: 367472b3a3 (このIDを非表示/違反報告)
るるあ。 - ページ48の後半の「ひしひし」の部分、「ひしひ」になってます…いつも更新ありがとうございます!このご時世なので、お身体には十分お気をつけくださいね! (2020年8月8日 15時) (レス) id: 807ddee245 (このIDを非表示/違反報告)
白菜(プロフ) - 藍知さん» Sgさんですよ…ほれほれ……() (2020年8月8日 13時) (レス) id: 367472b3a3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:白菜 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2020年8月2日 12時

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