いや、ここは自分が 【ジュリウス・リヴィ】 ページ17
ラウンジの片隅で整った寝息が聞こえる。勿論、誰か分かっている。
組んだ腕を枕がわりにしてAは居眠りをしていた。
きれいに纏めてある髪が今日は少し乱れている。
額を出したヘアスタイルだったが半分ほど額を隠していた。
顔の高さを同じにして覗くと、戦場とのギャップが伺えた。
大胆で強力な彼女は同僚の女性からイケメンと言われるほど雄々しいのである。
ルックスもそうであって、伏せ目な目元には短い睫毛。いまそれがよくわかる。
だがやはり体格は女性であった。
四肢にはもう少し肉をつけないといくら頼りになっても肝を冷やしそうだ。
そう心配すると、恋人がいないあんたを心配した方がいいだのあんたのファンにヤバイのいるかもだのこちらへ向けてくるのだ。
そんな強気な奴の寝顔。生意気だがまだ幼い少女であることを思い知らされる。
可愛そうなので俺の上着を掛けてやった。
「おい、その上着をどけろ。」
冷たい声が聞こえた。赤いマントを脱ぎかけていたリヴィだった。
「私が、今、Aに掛けようとおもっていたのに、だのにお前は…」
「俺が掛けたから何も支障はないだろう?」
不満そうに首を傾げ、さらに睨む。
そのまま大股でAへ近付き、怖かっただろう、と彼女へ声を掛ける。
その瞬間、俺の上着を剥がし、代わりに彼女の赤いマントを掛けた。これには喫驚した。
上着は投げられ、宙を舞い、頭上へ柔らかく落ちた。
上着を剥がす手は乱暴でマントを掛ける手は恐ろしく優しい。
「寝ている乙女に男のにおいがするものなど可哀想だ。」
デリカシーに欠ける、と強く言い放つ。
「何かあったのか?」
気に障ったことがあったのか知らぬ。が聞けば少しは怒りが収まるかもしれない。
リヴィは腕を組んで話した。
「極東に着任する前、居眠りをしていた。目が覚めるととても大きな外套があった。」
「…まあご厚意には感謝したい、フェルドマン局長ので……察しろ!!」
苦笑い、そして将来への不安。やはり何時かそうなってしまう。
なってたまるか、と決意した刹那、大きな背伸びをしてAは目を覚ました。
「あ?これリヴィのじゃん。…掛けてくれた!?え、嬉しい!サンキュー!」
その瞬間、リヴィの表情は春の日差しを見つけた花のようだった。
少し照れくさそうに顔を逸らしている。
俺が上着を脱いでいることにも気づいてほしい。
変わらずリヴィに感謝を伝えるA。今すぐいいたい。
「察せ」、と。
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ルーネスガルディン - 死神のシャルロットだ。、、、此処は? (2016年6月13日 12時) (レス) id: e3be47b955 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白い屈み | 作成日時:2015年8月18日 15時