Euphoria【Raul】 (ページ6)

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Grateful days 6 ページ6

祭壇に花を捧げるとき、泣き腫らした顔のラウールくんを見つけた。彼のお父さんと、もうひとり男性が立っていたからお兄さんかもしれない。

俯いて白いハンカチを強く握りしめている横顔がどうしても美しくて、やっぱり見惚れてしまう。

はっとラウールくんが顔を上げた。見つめすぎたかな・・・そう思っているうちにバチっと目が合う。

一瞬大きな瞳を溢れそうなほど見開くと、彼は堪えきれなくなったように顔をぐしゃぐしゃにして、泣いた。

葬儀が終わって、ぞろぞろと教会を出る。

どんよりと広がるグレーの雲。気を緩めると雫が落ちてきそうな６月の空。

「Aさん・・・っ！」

悲鳴のような声で呼ばれた、と思った途端、大きな塊がどすんとぶつかった。

そのまま、きつく抱きしめられる。

「ラウール、くん・・・？」

「Aさんっ・・・Aさん・・・」

肩の向こうで泣きじゃくってる。

ああ。お母さんは死んだんだ。

ラウールくんの涙で、急に胸が塞がれるような思いが込み上げた。ほんのさっきまで悲しくなんてなかった。だって、ほとんど接点なんかなかったもの。

でも、生きて『いる』のと『いない』のは、天と地ほども違うものなんだな・・・

唇を噛み締めて、強く目を瞑る。ラウールくんの丸まった背中をゆっくりと撫でる。そのうちに、両手を回して抱きしめた。

不思議。

たった２回しか会っていないのに。

ほとんど知らない子なのに、ラウールくんに包まれて安心している自分がいる。

この世でたったひとりになったと思ったのに。

わたしには、この子がいるんだ。