Euphoria【Raul】 (ページ36)

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Grateful days 36 ページ36

彼は基本振付師で、アイドルやCMのダンスを考えたり、指導をしたり、バックダンサーだったり、このカンパニーでは公演の他にもそういった仕事を請け合っているのだ、とはじめてラウールのいる場所の詳しい説明を受けた。岩本さんはこの界隈ではかなりの有名人だとか。

「ラウールは学校があるから、仕事はさせてないですけどね。でも・・・」

ちらりと岩本さんがラウールへ視線を投げる。当の本人はエビチリでほっぺたを膨らませているけど。

「こいつは、踊れますから」

脳裏に、さっきのステージが甦る。スポットライトに照らされて、完全に空気を掌握していた、その存在感。

彼の発する音以外には、なにものも許されないような緊張感。そして、すべてが許されるような包容感。

場を支配する力、とでもいうのか、初めてこういう舞台を見たわたしでも、きっと稀有な存在なんだろうと想像するほどの。

ふっと息を吐き、再び岩本さんはにこっと目を細めた。

「公演しばらく続くんで、もうちょっと預かりますけど、心配しないでくださいね」

「Aさん、お土産、何がいい？」

末恐ろしい１９歳が、泰然と微笑んだ。

ラウールは一次会で解散だけど、次のお店と駅の方向が一緒だからぞろぞろと歩き出す。

「Aさん、ラウール、ちゃんとやってます？」

今度は目黒さんだ。