Euphoria【Raul】 (ページ1)

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Grateful days 1 ページ1

病院は嫌いだ。

どんなに取り繕っても、結局のところ人が最期を迎える場所ということに違いはない。

東京湾に面した、一見ホテルのような巨大な建造物。

けど、淡く塗られた壁でもどことなく漂う淀みは隠し切れていないと思う。

建物まで続く公園のような芝生の広場へ、ため息と共に足を踏み入れた。

海の中に埋め立てて作られた小さな丘には、季節の花を植えた花壇。ブランコもある。潮風に強い太い木は、どこから持ってきたんだろう。

花を落とし青々とした葉を茂らせたその木の根元に、これ以上ないくらいぎゅっとうずくまった背中が見えた。

「大丈夫ですか？具合悪い？」

ここは病院の敷地内だ。通院か入院の患者がここらへんで倒れてるっていうこともなくはないだろう。

「どうかされましたか？」

もう１度声をかけてから、わたしより二回りくらい大きな背中をゆっくりと撫でさする。貧血にでもなったのかな。

膝を抱えていた腕の間から起き上がったその顔。

息を飲むって、こういうこと。

「・・・」

なんて、美しいの。

天使がいるなら、きっとこんな顔をしてる。

涙に濡れていても、泣きすぎて髪の毛がぐしゃぐしゃになって張り付いていても、美しい顔が汚れることってないんだな。

水分をたっぷりと含んだ大きな瞳がわたしの顔面を捉える。

こんな美しいひとに見つめられたら、もう羞恥しかないんですけど。