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『そもそも、死んだら生きている時の記憶がほとんど消されるから。だから知り合いに会っていても自分は気づかないことが多いんだ』
記憶って、消されちゃうんだ。今までの楽しかったことも、悲しかったことも、全部、忘れてしまうのか。あれ、でも…
「監死官さんの記憶もないの?」
『…うん、ないよ』
「本当に?ほとんどって言わなかった?それに今、間があったけど?」
アルコールが回っていても、そういうところは気づけるぐらいの鋭さは正常みたいだった。
『流石だなあ、クイズ王さんは』
ふっと笑って監死官さんは負けだよ、と続けて言った。
『たまに例外がいるんだよ。断片的に生きてた頃の記憶が残ってしまうことがあってね。それが私』
「どれくらい覚えてるの?」
『Aっていう名前だった、ってことぐらいかな、覚えてるのは。でもついつい生きてる人間に感情移入しちまってさ、よくルールを破っちゃうんだよね』
主に破るのは死神だけどね?と笑いながら言った。
「…Aって呼んでもいい?」
俺がそう言うと、彼女は目を丸くして驚いた。
『…別に呼びたきゃ呼べば』
まるでツンデレの代名詞が返ってきたので、お言葉に甘えてAと呼ぶことにした。
「よーし、酔いも覚めてきたしそろそろやろうかな」
『え、何を?』
「ん?何も言わずに去るのもあれでしょ。だから、ビデオメッセージでも残しておけば少しは報われるかなって思って」
ずっと、どうにかして自分の気持ちをみんなに伝えたいと思っていた。でも、パソコンで打つだけじゃ俺だという信ぴょう性が低くなるし、かと言って直筆で語れる量でもない。そうなると残ったのは動画だった。まぁ、YouTuberだしね。
「Aも手伝ってくれる?」
『…うん』
オフィスの撮影部屋に置いてあった三脚を一つ家に持ち帰っていたので、それを一緒にセッティングした。
「どう?ちゃんと画角に収まってる?」
『うん、収まってるよ』
「ありがと」
『じゃあ私、出てるね。恥ずかしいでしょ?』
「あー、まあ、うん」
『たまには主任ところにも顔出さないといけないからさ』
「分かった、いってらっしゃい」
『おう。終わったらまた来るわ』
そう言ってAは消えていき、1人になった。もう、この家にいられるのもあと少しなのかと思うと寂しい。しかし、今はビデオメッセージを撮ることに集中しよう。
「よし、」
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ちゃるちゃる(プロフ) - いろさん» ありがとうございます〜!これからも温かい目で見ていただけると嬉しいです! (2020年2月22日 16時) (レス) id: d523c3bebb (このIDを非表示/違反報告)
いろ(プロフ) - 続編おめでとうございます!楽しみにしてますっ (2020年2月21日 6時) (レス) id: 5fbef9d1c0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちゃるちゃる | 作者ホームページ:
作成日時:2020年2月20日 17時