浪漫 kwkm ページ17
“今週の小説売上ランキングの第1位は、人気作家のAA先生の新作でした!”
たまたま入ったラーメン屋で麺をすすっていると、店のテレビから流れてきた。有難いことに人気作家という肩書きを貰えるようになったこの頃。編集者さんから売上良好ですと言われてはいたが、こうしてテレビで紹介されると流石に照れる。けれどもガッツポーズをするようなことはしない。至って冷静に聞き流し麺をすすっていた。
『…どうしたの?』
しかし、目の前で共にラーメンを啜るこの男、川上拓郎がじっとテレビを見つめていたので思わず私も手を止めてしまった。
「いや、何も」
『あぁ、そう』
彼は小さく呟いてまた食べ始めたので、何だったんだろうと思いつつも私も手を動かし始めた。ラーメンを食べ終え、店を出た。話す話題がなければ基本喋らない私達は、ずっと無言が続いていた。互いに無言が苦ではないので、特に何も考えず歩いていた。
「なんか、寂しい」
『え?』
急に川上が呟いた。
「Aが遠い存在になってる」
なるほど、そういうことか。珍しくテレビに興味を示したなとは思ったけどまさかそんなことだったとは。
『そうかな?私なんかよりも川上の方が遠いけど。だって大物YouTuberでテレビも沢山出てて』
スマホを開けば彼らの名前は沢山出てきていて、その度に寂しさを感じていたのはむしろ私の方だった。今日だって、会うのも2ヵ月ぶりぐらい。こんなにも都合が合わないなんてビックリだ。
「Aと同い年なのに、気づいたら先卒業してるし」
『それは川上が留年したからでしょ』
「それに俺には伊沢さん達がいたから、一人でここまで来たわけじゃない。」
そう考えると川上とは真逆に有名になっていった感じだ。彼は顔出しをしているが私は名前のみしか出しておらず、謎に包まれている作家としても有名になっている。まぁこれからも顔を出すつもりは無いけど。
「だって…俺が最初にAの才能を見つけたのに」
それを言われちゃあ何も言い返せない。川上の顔を見るとなんとも言えぬ表情で私を見つめていた。そんな顔をしないでよ。川上には笑顔が似合っているのに。じゃあ仕方ない、とっておき情報を教えてあげるとするか。
『来週発売の月刊ノベルライフ、絶対買ってよ。私のインタビューが載ってるから』
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ちゃるちゃる(プロフ) - いろさん» ありがとうございます〜!これからも温かい目で見ていただけると嬉しいです! (2020年2月22日 16時) (レス) id: d523c3bebb (このIDを非表示/違反報告)
いろ(プロフ) - 続編おめでとうございます!楽しみにしてますっ (2020年2月21日 6時) (レス) id: 5fbef9d1c0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちゃるちゃる | 作者ホームページ:
作成日時:2020年2月20日 17時