#20 ページ21
合わす顔がないといった感じでずっと俯いてしまっている伊沢さんに牡丹さんは近づいてスマホを見せていた。
「この顔に見覚えある?」
「……見たことあるようなないような」
「ま、その程度で正解だね」
それだけ言ってスマホをポケットにしまったが、話の文脈的に襲ってきた犯人の話をしていることは明白だった。
「やっぱり前に襲ってきた男で合ってたの?」
「そう。どうやらクイズ大会でボロボロに負けたのが悔しくて勝手に恨んでいたらしいよ〜。だから伊沢青年に会わせる必要もなーい!」
何ともまぁ迷惑極まりない動機。こんなことで殺されかかるなんてたまったもんじゃないが、それぐらい俺たちに人気が出てきているという証拠でもあった。なんだかめちゃくちゃ複雑だけれども。
「……本当にごめん」
真剣な面持ちで謝る伊沢さんにみんなが黙りこくってしまう。
無事で良かった。
全然気にしないで。
どの言葉も俺たちがかけていい言葉では無い気がして、かと言って何も浮かばなくて、結局口を噤む。
「君が無事で何よりだよ。ね?みんなー」
いつもの調子で明るく返し伊沢さんの肩を叩く。うん。俺たちじゃなくて牡丹さんが言うのが一番似合う。皆同じ考えだったのか微笑んで顔を見合わせ頷いた。
そして満足そうな表情をした牡丹さんはパン、と手を叩いていい音を鳴らした。
「一先ずはこれにて解決と見ていいだろう〜もちろん、一番の黒幕を突き止めなければいけないが」
結局は元凶をどうにかしないと安心することが出来ない。だが、向こうが姿を表さない限り俺たちがすべき事はないのである。
今回の目的は伊沢さんの身に起きている不可解なことを解決させることだった。とはいえ、これにて一件落着、とは言えないもどかしさが残る。
「暫しの休憩ということだな〜。QKだけに」
……みんな無表情で無反応。いかにも冷たい風が吹く。
「おい」
「じゃあ仕事に戻ろっか」
「そうですねー」
「おーい!」
完全に無かったことにしてそれぞれ解散。この感じが元に戻った感じがしてとても心地よい。この調子で全て終わればいいのだが、そうはいかないんだろうな。少しだけ残る不安には見ないふりをした。
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通りすがり - 何度もコメントすみません。やっぱりこの小説好きです!いくらでも待つので、続きを期待してもいいですか? (3月15日 16時) (レス) @page34 id: c971cc1ca3 (このIDを非表示/違反報告)
凛(プロフ) - 作品の世界観が素敵で一話目からノンストップで読み続けてしまいました。続きがとても気になります。また、更新されることを願っております。 (2022年9月17日 23時) (レス) @page34 id: 766ff61372 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃるちゃる(プロフ) - トマトさん» ありがとうございます、、、!かなり更新ペースが遅いのですが、佳境に入ってまいりましたのでぜひ温かく読んでくださると嬉しいです!ありがとうございます!! (2022年6月20日 12時) (レス) id: 05ff2dafb9 (このIDを非表示/違反報告)
トマト(プロフ) - コメント失礼します!作品の雰囲気がめちゃくちゃに好きでずっと読んでいられました!もっと早くに出会いたかったです……一読者として応援しています (2022年6月14日 19時) (レス) @page33 id: 44a1cdd5e5 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃるちゃる(プロフ) - 通りすがりさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます!返信遅くなってしまってすみません!相変わらずマイペースすぎる更新ですが何卒よろしくお願いしますー!!! (2022年3月1日 1時) (レス) @page28 id: 6736db345f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちゃるちゃる | 作者ホームページ:
作成日時:2021年11月18日 15時