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#15 ページ16

次の日から今田さんの言った通り本当にいつもの日常が戻ってきた。後をつけられることもなくなったらしいし、メールも郵便物も届かなくなったそうだ。だがいつ襲われるか分からない、というのだけがみんな心の中に常にあった。

そんなある日、伊沢は朝から打ち合わせだったため迎えは今田さんではなくマネージャーだった。そしてそのまま打ち合わせを終えてオフィスに行き、次の収録のためまたマネージャーと共に行動する日程となっていた。

いってきまーすとドアを開けて出ていったのが数分前。だがすぐにドアが開いて伊沢が戻ってきた。


「え、どうしたの」
「忘れ物しちゃった」
「何で確認しなかったんだよ」
「入ってると思ってた」


へへ、と悪びれる様子もなく笑いながら伊沢は俺の横を通り過ぎた。ここ数日でよく笑うようになったのは紛れもなく彼女のおかげだろう。そんな彼女はまだオフィスに来ていないが。


「お、あった」


お目当ての物を探して見つかった彼はすぐに靴を履いた。前に比べて表情が豊かになったのは嬉しいことだが忘れ物やなくし物はそろそろ気を付けてほしい。まだ完全に終わったわけじゃないんだし。


「もう忘れ物はない?」
「多分大丈夫」


玄関まで見送りにやってきた僕は特にすることもなく、壁に凭れながらドアを開けようと手をかけた伊沢を見つめた。


「…え、マネージャーさんは?」
「ん?車の中で待ってもらってる」
「え。一人で戻ってきたの?」


僕の他に社内にいたのは何も知らない人たちのみ。そして玄関に居るのは自分と伊沢の二人だけ。たかが外仕事に行く社長のことなど当然見送ろうとは考えない。皆それぞれ自分のやるべきことがあるのだから。


「すぐだから大丈夫だって!ちゃんと楽屋着いたら連絡するから!」


僕の心配を他所に笑いながら明るくそう言った。特に何も無い日々が一週間ほど続いているとはいえ、危機感がなくなりすぎだ。まぁ連絡してくれるならいいかと思いながら手を振って今度こそ見送った。────だが、何時間経っても連絡は来なかった。

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通りすがり - 何度もコメントすみません。やっぱりこの小説好きです!いくらでも待つので、続きを期待してもいいですか? (3月15日 16時) (レス) @page34 id: c971cc1ca3 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 作品の世界観が素敵で一話目からノンストップで読み続けてしまいました。続きがとても気になります。また、更新されることを願っております。 (2022年9月17日 23時) (レス) @page34 id: 766ff61372 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃるちゃる(プロフ) - トマトさん» ありがとうございます、、、!かなり更新ペースが遅いのですが、佳境に入ってまいりましたのでぜひ温かく読んでくださると嬉しいです!ありがとうございます!! (2022年6月20日 12時) (レス) id: 05ff2dafb9 (このIDを非表示/違反報告)
トマト(プロフ) - コメント失礼します!作品の雰囲気がめちゃくちゃに好きでずっと読んでいられました!もっと早くに出会いたかったです……一読者として応援しています (2022年6月14日 19時) (レス) @page33 id: 44a1cdd5e5 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃるちゃる(プロフ) - 通りすがりさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます!返信遅くなってしまってすみません!相変わらずマイペースすぎる更新ですが何卒よろしくお願いしますー!!! (2022年3月1日 1時) (レス) @page28 id: 6736db345f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ちゃるちゃる | 作者ホームページ:   
作成日時:2021年11月18日 15時

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