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今日は一段と集中力がなかった。だからこうちゃんに話しかけられていることにもすぐには気づくことが出来なかった。ねぇってば、と肩を叩かれてやっと振り向くと、心配そうに私を見つめていた。
「いいの?」
「え、何が?」
「山本さん。もう帰っちゃうけど」
「……」
何で私が山本くんに用があることをこうちゃんが知っているのだろう。だがそんな事は二の次だった。え、もう帰るの?早くない?と時計を見るが全然早くなかった。こんなに時間が経っていたなんて。
やばい、今日渡せないと私の晩御飯になってしまう。別に渡さなくても誕生日とか色々とこれからイベント事はあるから日頃の感謝ということで伝えることは出来るけれど…
「山本さんに用があるんでしょ、ほら、今ならまだ間に合うよ」
「う、うん…けど何で、」
「だってすごい山本さんのこと気にして見てたじゃん?」
そんな、無意識だった。目は口ほどに物を言うとはまさにこの事か。バレたのがこうちゃんで良かったかも。山本くん本人にバレることほどヤバいものはないけれど。
「片付かなかった仕事は明日にでもやりな」
「ありがとうこうちゃん!また明日!」
「うん、お疲れ」
思いがけないところで背中を押してもらい、急いで荷物を持って駆け出す。
向かった先にはちょうど靴を履き終えてドアに手をかけている山本くんがいた。
「…っ、待って!」
「わ、ビックリした」
反射神経がいい山本くんは私の声に即座に振り向いてくれた。私は私で走っていたから急には止まれず、ぶつかりそうになるぐらい近くまで行ってしまった。
「Aちゃんどうしたの?」
「い、いや…私も帰ろうと思って!そしたら山本くんが居たからさ」
前もこんな事があったような。その時は立場が逆で。
「ん、いいよ。帰ろっか」
でもドアを開けるのはいつも山本くんなんだ。
*
二人きりの帰り道なんてしょっちゅうあったのに今日は何を話しながら歩いていたのか最早覚えていない。だが分かれ道がそろそろ来てしまうと気づいて初めて焦る。
「…あのさ、山本くん」
「ん?」
「これ、あげます」
一世一代の告白をしているかのように緊張しながら昨日作ったチョコを渡す。
「いいの?」
ポケットに手を入れていた山本くんがそっと受け取ってくれた。私はこれ以上声が出なくて頷くことしか出来なかった。
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豪炎寺修也推し - ちゃるちゃるさん» いえいえ、気にしないでください^ ^その時はコさん推しだったんだと思います。今また箱推しに戻っていまして…笑 コさんとは出身が同じなんですよ!それ見て嬉しくなってるんです!これからも頑張ってください! (2021年5月17日 20時) (レス) id: 619493ea8b (このIDを非表示/違反報告)
ちゃるちゃる(プロフ) - お返事遅くなってすみません!涙 マシュマロもありがとうございます!コさん推しなんですね!一緒で嬉しいです!!笑 これからもよろしくお願いします! (2021年5月16日 17時) (レス) id: 6736db345f (このIDを非表示/違反報告)
豪炎寺修也推し - ちゃるちゃるさん» これからも見ますよ!ちなみに、28日についったの方で匿名で送らせて頂きました!でもついったログインできないので見れないのですが…。ちゃるちゃるさんに届けば!と思い、送らせて頂きました! (2021年4月30日 22時) (レス) id: 619493ea8b (このIDを非表示/違反報告)
ちゃるちゃる(プロフ) - ありがとうございます!素敵なお言葉で励みになります、、、マイペース更新ですがどうぞこれからもよろしくお願いします! (2021年4月29日 0時) (レス) id: 6736db345f (このIDを非表示/違反報告)
豪炎寺修也推し - コメント失礼します。ちゃるちゃるさんの作品を一気読みさせていただきました!この作品シリーズ、めちゃくちゃ好きです!更新待ってます! (2021年4月28日 20時) (レス) id: 619493ea8b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちゃるちゃる | 作者ホームページ:
作成日時:2021年2月8日 17時