酸いが揺らめく橙色-wtnb ページ1
甘い転がる赤の続き
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オフィスからそれほど遠くないコンビニで大体いつも見かける女性がいる。彼女は俺の少し後にやってきて、お昼ご飯らしきものを手に取ると必ず必ず紙パックのりんごジュースに手を伸ばす。
ほら、やっぱり今日も買ってる。
俺はその隣に並んでいるオレンジジュースをいつも買う。だから勝手に親近感が湧いているんだけど彼女の名前も知らなければ顔も正面からは見た事が無い。
りんごジュースも美味しそうですよね、とか声をかけることが出来たらいいのだけど、会計に並んでいるところで急に後ろを振り返って話しかけたら絶対ヤバい奴でしょ。福良さんと仲がいいあの店員さんに睨まれたくないから大人しく黙って並ぶだけ。
きっと、いやこれからもずっと、りんごジュースを手にする彼女と関わることは無いんだろうなと思っていた。
「マジか…」
今日は会議が少しだけ長引いてしまった。それでもお昼時だから何も問題ないだろうと思っていたのに。
コンビニに入るといつも見かける彼女もオレンジジュースも見当たらなかった。確かに安くて美味いけどさ、売り切れることなんてなかったじゃん。
「あの、…」
休止中と書かれた入口側のレジに立っていた店員さんに一縷の望みをかけて話しかける。
「オレンジジュースなら在庫切れですよ」
「え、もうないの?」
思わずデカめな声で言ってしまい口に手を当てるがもう遅い。隣のレジで会計をしていた人がこっちを向いた気がする。あぁもう、本当についてないな。
「そんなぁ…」
「来るの遅いんですよ。今日は諦めてください」
冷たくされてしょげる俺。そんな言い方しなくてもいいじゃん。なに、福良さんと上手くいってないの?
何も言えず仕方がないから帰ろうとしたその時、横から声をかけられた。
「え?」
横を向いて驚いた。いつも見かけていたあの人に声をかけられたという事実に頭が追いつけず、ただひたすらに呆然と立ち尽くす。
「いつも買ってましたよね、見かけてました」
初めて彼女の顔をちゃんと見れた気がする。それだけじゃなくて、彼女の声も。というか、目が合っていることですら驚きを隠せないのに。
「そ、それじゃ!」
「あ……」
彼女は言うだけ言って走り去ってしまった。渡されたレジ袋はずっしりと重みを感じた。その中には俺がいつも飲んでいるオレンジジュースが入っていた。
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豪炎寺修也推し - ちゃるちゃるさん» いえいえ、気にしないでください^ ^その時はコさん推しだったんだと思います。今また箱推しに戻っていまして…笑 コさんとは出身が同じなんですよ!それ見て嬉しくなってるんです!これからも頑張ってください! (2021年5月17日 20時) (レス) id: 619493ea8b (このIDを非表示/違反報告)
ちゃるちゃる(プロフ) - お返事遅くなってすみません!涙 マシュマロもありがとうございます!コさん推しなんですね!一緒で嬉しいです!!笑 これからもよろしくお願いします! (2021年5月16日 17時) (レス) id: 6736db345f (このIDを非表示/違反報告)
豪炎寺修也推し - ちゃるちゃるさん» これからも見ますよ!ちなみに、28日についったの方で匿名で送らせて頂きました!でもついったログインできないので見れないのですが…。ちゃるちゃるさんに届けば!と思い、送らせて頂きました! (2021年4月30日 22時) (レス) id: 619493ea8b (このIDを非表示/違反報告)
ちゃるちゃる(プロフ) - ありがとうございます!素敵なお言葉で励みになります、、、マイペース更新ですがどうぞこれからもよろしくお願いします! (2021年4月29日 0時) (レス) id: 6736db345f (このIDを非表示/違反報告)
豪炎寺修也推し - コメント失礼します。ちゃるちゃるさんの作品を一気読みさせていただきました!この作品シリーズ、めちゃくちゃ好きです!更新待ってます! (2021年4月28日 20時) (レス) id: 619493ea8b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちゃるちゃる | 作者ホームページ:
作成日時:2021年2月8日 17時