ページ ページ31
「食べる？」スマホから視線を移すとオレンジ色に染まったアレが目に入った。「食べる」「はい」「剥いてよ」「はぁ？」自分でやれよ、とぶつぶつ言いながらも剥いてくれるから顔がつい緩む。「あー！なんで食べるの！」「半分食べる権利あるでしょ！」ドヤ顔をしながら私の目の前で食べる姿が似合っていてさらにムカつく。「Aが捨ててね」「そういう仕打ち？」「当たり前じゃん」おこたから出られないの分かってて言うじゃん。「あーん」「仕方ねぇな」口を開けて目を合わせると細くて長い指が目の前にやってきた。それぐらいのサービスはしてもらわないとね。でも満更でもない顔してる乾も乾だよ？/ini
暗くなったからカーテンを閉めようと立ったのに夜空が綺麗でベランダに出てしまった。「寒いでしょ、これ着な」「あ…ありがとうございます」上司である河村さんに声を掛けられてここがオフィスであることに気付かされた。「夜景が綺麗だね」「そうなんですよ」河村さんが持ってきてくれた上着を羽織りながら会話をする。空を見上げる河村さんの姿が絵になっていて写真に収めたいぐらいに美しい。「…月、見てください」「ん？」「じゃん！」四捨五入したら丸いと言える月に視線を逸らした隙に、手品を見せる。「みかん」「月に似てません？」「まあ、」たまたまポケットに入っていたみかんを見せただけなのだが、それでも河村さんは笑ってくれた。「炬燵に入って食べたいな」「私の家にありますよ」「そうなの？じゃあ行って食べよ」「家散らかってるんでまたの機会にお願いします」あははと二人で笑い合う。上司と部下の関係から少し距離が近づいた瞬間だった。/kwmr
よいしょ、と呟いて私の隣にやってくる姿はまるで猫のようだった。「ねぇ、今何してんの？」「みかん食ってる」「うわ良いな、私も食べよ」別に合わせなくていいのにという声を聞きながらみかんを持ってきて食べ始める。「美味しいね」「そうだね」拓朗くんの声だけが機械から聞こえてきてとても悲しくなる。1人で入る炬燵は広すぎだよ。いつものように私にくっついてきて、狭いよなんて言い合いたいよ。「今何考えてた？」「え？いや、別に…」一拍置いて聞かれた言葉にしどろもどろになる。寂しいなんて言えないよ、重荷になりたくないから。「俺は寂しいなって思ってた」Aは？と聞かれたら迷わず頷くのにな。/kwkm
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 200人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「短編集」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
緋歌梨(プロフ) - ちゃるちゃるさん» いえいえ！ (2020年12月30日 22時) (
レス) id: ef32365840 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃるちゃる(プロフ) - 緋歌梨さん» そうなんですね！知らなかったです。教えて下さりありがとうございます！ (2020年12月30日 22時) (レス) id: 6736db345f (このIDを非表示/違反報告)
緋歌梨(プロフ) - コメント失礼します！みかんの白い筋は､アルベドって言うんですよ！ラテン語で“白さ”という意味です！このコメントはスルーしていただいても構いません｡お節介ですいません… (2020年12月29日 20時) (レス) id: ef32365840 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ちゃるちゃる | 作者ホームページ：
作成日時：2020年11月9日 17時
