ofをuntilに-izw ページ20
私には絶対、手に入れなければならないものがある。いや、正式に言うと、手に入れなければならないものが“できた”。
「伊沢さん!」
ポケットハンドをして猫背のまま歩く彼の名前を叫ぶ。振り向いた彼はネックウォーマーで顔が半分隠れている。首元には何も巻かずネックレスだけが目立つ私とは対照的だ。
「…なに?」
低い声で一言。冷たい目をしているのは朝が早くて寝ぼけているから。睨んだ目をしているのは私のことを警戒しているから。
立ち止まってくれたのを良いことに私は1歩ずつ彼に近づく。
「伊沢さん」
私は昨日、貴方に初めて会って恋に落ちました。一目惚れってやつです。
「今日は12月12日です」
「…そうだね」
つまり、あと12日でクリスマス。私は何としてでも貴方とクリスマスを一緒に過ごしたいんです。
「あのねぇ、」
「お願いします。あと12日間で貴方を振り向かせてみせるので!」
誰かを好きになるなんてもう出来ないと思ってた。
今年のクリスマスもどうせシングルベルだと思ってた。
だけど途方に暮れてた私を助けてくれた貴方のことが好きになったんです。
昨日の今日でだなんて信じてくれないでしょう。でも私 1度決めたら絶対にやり切るまで辞めないので。
「そういうの迷惑なんだけど」
「分かってます。だから12日後、ダメなら潔く諦めますから」
私みたいな変人に好かれてしまう伊沢さんが可哀想だと私も思ったので期間を限定します。諦めも時には肝心と言いますし。まぁ伊沢さんにとっては不利なことでしかないのは重々承知なのですが。
「…良いよ。面白いじゃん」
それなのにふっ、と笑っていつになく低い声で条件を呑んでくれた。私が昨日見た笑顔とはまた違う表情で、図々しくも宣戦布告したと言うのに貴方の知らない一面を知れて惹かれてしまう。
「やれるもんならやってみろよ。言っとくけど俺、君みたいなタイプ全然好きじゃないから」
これは本当に昨日私が好きになった人と同一人物なのだろうか。面と向かって言われてしまうとさすがの私も傷ついてしまう。でも今更引き返せない。
「本気で挑むので伊沢さんも本気で来てくださいね」
「え?俺はいつでも本気しか出さねぇよ?」
ふふ、と笑いながら伊沢さんの半歩後ろを歩く。じゃあまずは──
「手始めに 私の連絡先を受け取ってくれませんか?」
「……いいよ。」
あれはクリスマスの12日間という歌だけれど、それなら私はそれまでの12日間を大事にするよ。
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緋歌梨(プロフ) - ちゃるちゃるさん» いえいえ! (2020年12月30日 22時) (レス) id: ef32365840 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃるちゃる(プロフ) - 緋歌梨さん» そうなんですね!知らなかったです。教えて下さりありがとうございます! (2020年12月30日 22時) (レス) id: 6736db345f (このIDを非表示/違反報告)
緋歌梨(プロフ) - コメント失礼します!みかんの白い筋は、アルベドって言うんですよ!ラテン語で“白さ”という意味です!このコメントはスルーしていただいても構いません。お節介ですいません… (2020年12月29日 20時) (レス) id: ef32365840 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちゃるちゃる | 作者ホームページ:
作成日時:2020年11月9日 17時