白百合園に咲く彼岸花 (ページ4)

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伊野尾の家は遠かった。
サッカー部で鍛えた脚力を持つ俺でさえキツかった。
電車をふたつ乗り換えて右に曲がったり左に曲がったり
とにかく歩く、歩く、歩く。

「よく毎日ガッコー通ってるな、
しんどくねぇ？」

「最初はしんどかったけど慣れた。
人の順応力を舐めちゃいけねぇ」

彼はクックックと笑った。

「つうか、施設には沢山いんのかよ、人」

「いや、俺と、お世話になってるおばさんと、
ちねんっていう俺らより二つ下の子と
ひかる。ひかるは俺らとタメだよ」

「へぇ、4人暮らしか」

「そう、毎日賑やかですよ」

まだか、まだか。新しい出会いはすぐそこだ。
友達になれるだろうか、ちねんって子は
中2なんだよな、今の中学生の流行りって
なんだろう。

「ただね、薮」

伊野尾は立ち止まった。
滅多に見たことがないほどに真剣な顔をして。

「さっき言ったひかるはね」

「あぁ、タメの子な。俺仲良くなれっかな、
どんな奴なんだよ」

「ひかるは、重度の知的障害を持っていて、
見た目は俺たちとタメだけど、中身は7才、
つまり小学校1年生ってこと。

ひかるは沢山の辛い過去があるんだ。
実親に捨てられて、警察に保護される前は
毎晩のように顔も知らないような奴にれイ……ぷされて
その上中学では酷いいじめを受けていたんだ。
ひかる自身は酷いことされてるってわかっていないけど。
でもやっと高校生になっていじめも無くなって
俺たちも安心出来るようになったんだ。

だから薮、もしお前がひかるを傷つけたら
お前と縁を切る。
お前に限ってそんなことありえないと思うけど
一応言っておきたかったんだ。
わりいな、俺も神経質になってんだよ」

伊野尾は酷くつらそうにそうこぼした。