🐑信じることは騙されること ページ22
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「別れたくない」そう言って頬を膨らます。
そんな顔されて強気でいれる女がいると思うか。
自分の可愛さを自覚してるヤンヤンはずるい。
でも今日の私は絶対に折れたくない。
深夜のファミレス。遠くの席で大学生らしき集団が騒いでる。隣の席のスーツ姿の男性は今にも寝そう。レジにはやる気のない店員がボーっと突っ立ていた。
出口の見えない話し合いに痺れを切らしたのか、ヤンヤンが呼び出しボタンを押す。
ここにきてからもう２時間。別れたい、別れたくない、こんな話を繰り返している。
まじめに話もきかずに、パフェを追加する顔がむかつく。
「Aは？」
「いい、太るもん」
「じゃあ、チョコケーキも追加で」
「食べないよ」
「いいよ、俺が食べるから」
これで何回目かの別れ話。
別れたいと言うと分かったって部屋を出ていくくせに、次の日には何もなかったように連絡をしてくる。
私たち別れたじゃんって言ってもそんなわけないじゃんっていつも忘れたふりをしてズカズカと家に上がる。
そんなことももういい加減にしたい。
そもそも別れたい原因を作っているのはヤンヤンのほうだ。
ばれてないと思ってるのか、許させると思っているのか、それとも何にも考えていないのか、ほかの女の匂いをつけたまま私を抱きしめる。
甘ったるい香りが気持ち悪い。
私は香水が嫌いでつけることはほとんどない。
それにヤンヤンだって甘い香りは好きじゃなかったはずだ。
「昨日何してたの」
「友達と朝まで飲んでた」
「はあ」
「先輩もいたから連絡出来なかった、しょうがないじゃん」
私といるときはスマホばっかりいじってるのに、一緒にいないときの連絡は全然返ってこない。
ヤンヤンは親しい人にはわがままな態度をとることが多く、それを可愛いだとかしょうがないなって許してくれるような友達しかいない。少しスマホを見ただけで本気で怒るような人はいるわけがない。
いくら問い詰めたってとぼけるばかりで、可愛い顔して謝れば許されると思ってる？許してきたけど。
分かり切った嘘に騙されるのには、もう、うんざりだ。
私の気持ちなんて何も考えずに眠る隣で、気づかれないように何度泣いたことだろうか。
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作者名：ロク | 作成日時：2022年12月25日 22時
