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「てかAって料理できるんだっけ」
「マークに比べたら誰でも出来るよ」
からかうような口調にじとりと不満げな視線を向ければ、
怖い顔やめてよとヘラヘラ笑った。
怖い顔なんかしていない。
「今度さあ、俺に手料理振る舞ってよ」
「え〜？」
「いいじゃん、たまには」
「うーん」
「なんでちょっと嫌そうなの」
「胃袋掴んじゃったら困るもん」
胃袋どころか心臓丸ごと掴まれてるんだけど！
と大声が出そうになったけど、ぎりぎりのところで踏みとどまる。
Aはずるい。
俺の気持ちに気づいているんだろうなと思うなと思う時が時々ある。
そろそろ本格的に口説こうかと意気込んだ時に「恋愛はしばらくしない」と言われてしまった。
先手を打たれてしまったら俺は何にも出来ない。
数少ない貴重な休みをこうしてAに会いにくることに使っている意味を、
最近流行っているらしいお店のスクショを送ってきて「ここ行ったことある？」と聞いてきたAのためにわざわざ予約をとってここまで来る意味を
伝えることも許してくれない。
Aにも約束の日が近づくにつれて緊張にも似た感情が昂ることがあってほしいと思うのは、
我儘なんだろうか。
「ねえ、今度はここ行きたい」
「いいよ、いつにする？」
「予定がわかったら連絡する」
Aはずるい。
笑った顔に簡単にときめく俺はバカだ。
好きになった方が負け、その言葉が俺にはぴったりだと思う。
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作者名：ロク | 作成日時：2022年12月25日 22時
