10.「しょうがないから送ってやる」 ページ10
RJ side
先生に呼び出されていたら遅くなってしまった。
昼間までの快晴が嘘のように窓の外は大雨。
折りたたみ傘があるから別にいいけど、雨ってだけで気分が落ちる。
教室に戻ると自分の席に座って外を眺めているAがいた。
物憂げな横顔を見て心臓がドクンと大きく音を立てる。
それを悟られないように小さく息を吐き出してからAの名前を呼ぶと、Aはゆっくりと振り返りヘラっと笑顔になった。
RJ「何してんの？帰んないの？」
『傘忘れちゃった』
RJ「馬鹿かよ、どうすんの？」
『ジェノ待ってる』
RJ「あ〜体育委員だっけ」
『そう、体育祭のなんかで集まりがあるんだって」
RJ「お前ずっとここで待ってんの？」
『うん、一人で帰るなって言われてるし』
誰に言われているかなんて聞かなくても分かった。
もう時効じゃないかと思う約束でさえ、未だにAを縛り付ける。
彼女が出来たとしても二人に距離が出来たとしても、
そこには確かな繋がりがあって、
それが胸の奥をじりっと焼け焦がすような気がした。
RJ「ジェノからさっき今日の委員会は長引きそうって連絡来てたけど」
『え、そうなの？……あ、私にも連絡来てた』
RJ「しっかりしろよ…」
『えへへ、ロンジュン帰んないの？』
RJ「しょうがないから送ってやるよ」
『え、でも逆方向じゃない？』
RJ「お前のこと置いて帰ったなんてバレたらころされそう」
『そんなことないと思うけど、ありがとう』
傘の中にいると雨の音も遮られるようで、
Aの声だけがやけにクリアに聞こえる。
隣を歩くAがなんかいつもよりも小さく見えて、
歩くたびに時々触れる肩がやけに華奢に感じて、
こんな大雨に降られたら今すぐにでも風邪をひきそうだななんて思う。
そんなことを考えながらAの家まで送り、
気づけば自分の右肩がびしょ濡れになっていた。
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作者名：ロク | 作成日時：2022年5月8日 2時
