13.「今日から他人」 ページ13
JN side
満員電車に押しつぶされないようにAの顔の横に両手をついて後ろからの圧に耐える。
この数日間でだいぶ筋肉がついたような気がするけど、気のせいだろうか。
ふあ、と小さなあくびをしたAを身下ろすと、恥ずかしそうに笑った涙目がこちらを見つめる。
綺麗な色をした目の下には薄っすらと隈が出来ていた。
JN「眠そうだね」
『今夢の中なのか起きてるのか分かんないくらいには眠いよ』
JN「深刻だね」
『その言い方ジェミンみたい』
JN「そういえば、昨日ジェミンから連絡来てたけど、ドンヒョクと幼なじみやめたの？」
『うん、今日から他人』
JN「そこまでする必要ある？」
Aは曖昧に笑って、俺の胸に頭をつけて目を閉じた。
通学電車の中でこんなに無防備でいるなんて、今までどれだけドンヒョクがちゃんと守ってきたのかを考えてしまう。
一緒に通学するようになって三日目くらいにAから
「ドンちゃんに言われてるんだろうけど、私一人で大丈夫だよ」
と言われたけど、一人にさせるわけがない。
もちろんAが心配なのもあるし、もし一人にさせたら俺の命は危ういのが容易に想像がつく。
一番の理由は、学校についてしまえば二人でいられる時間なんてほとんどないんだから、
せめて通学中くらいは独り占めさせて欲しいってことだけど。
『ナナ〜ロンちゃ〜ん、おはよ〜』
RJ「おはよー」
JM「A〜今日も可愛いね〜」
『ちょ、髪の毛ぐしゃぐしゃにしないで」
JN「2人ともおはよ」
Aを教室まで送り届けたところで二人の時間は終了する。
たった数十分が俺にとっては一生続いてほしいくらい大切なものだ。
出会った時から、友達だなんて思ったことは一度もなかった。
だけど出会った時からずっとAの視界はドンヒョクでいっぱいで、Aを見ている俺に一切気付こうともしなかった。
Aの隣はドンヒョクで、ドンヒョクの隣はA。
それでいいと思った。
好きになったのはドンヒョクを見ているAだったから。
ドンヒョクしか見えていないAだったから。
でも、ドンヒョクのことで落ち込んだり悲しんだりするAを見て、
俺ならそんな顔させないのにって、そう思うようになってしまった。
ドンヒョクをまっすぐに見つめるAは、
俺のことをどんなふうに見つめてくれるんだろうって。
.
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作者名：ロク | 作成日時：2022年5月8日 2時
