硬貨23枚 ページ24
廊下に小さな足音が響く。
跳ねるように走り、教室をそっと覗いた。
1年B組の教室には見慣れない顔が4つ。…この前見たけど。
エペル「あ、A!」
『やっほ〜、お勉強中?』
ノートから視線を上げて、エペルが手を振る。
他にいるのはいつものメンツだ。エース、デュース、ユウ、グリム、ジャック。
相変わらず仲いいなぁ、と思いながら彼らに近付く。
エペル「テストが近いからさ」
『今回の生物学範囲広いよねぇ』
エペル「Aはどうしたの?」
『忘れ物を取りに〜。ちょっとごめんね』
デュース「ぉ、わ、悪い」
デュースが座っていたところに手を突っ込む。
ノートとファイルを取り出して、ちらりとデュースのノートに視線を投げた。
『ここ、間違えてるよ』
デュース「えっえ?」
『難しいよね、僕もよく間違えちゃうんだぁ…』
へらりと笑ってデュースの手からペンを抜き取る。
1つ1つの滑るような所作に、デュースは目も心も奪われていた。
もちろんそれにAは気付いているわけだが。
懇切丁寧に教え、ちらりと顔を覗き込む。
デュースは手は動かしているものの、頭はショート。
そんな様子に周りの4人+1匹はため息をついた。
『皆お勉強頑張ってねぇ』
エペル「じゃあね、A」
『ばいば〜い』
去り際、デュースにウィンクを落として教室を後にした。
ウブだったな、真面目な人は皆あんな感じだったっけ?プライド高い人しかいないからよくわかんないや。
Aが去り、エースはムスッと気に入らないような表情を浮かべていた。デュースは未だに起きたことを信じられず、Aが残した字を呆然と見つめている。
エース「俺もそこ座っときゃよかった〜、デュースばっかずりぃ!」
デュース「ふ、不可抗力だッ!」
ユウ「この前追いかけてたときと随分雰囲気が違うね」
グリム「追いかけてた?」
ユウ「グリムは補修だったでしょ」
そう、以前追いかけたときは怒っていた。可愛らしいが怖い。
しかし、先程のAは優しかった。サバナクローで唯一の存在かもしれない。
本心を知っているジャックは溜息をつく。
価値観の違うAはあまり好きではない。ずる賢いから。
でも、"僕にも僕なりの事情がある"の一言だけでなんとなく腑に落ちてしまったのが何よりも悔しかった。
あのとき見せた暗い顔は、気のせいだったのだろうか?
ひらりと白い紙が窓辺に落ちた。
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しお(プロフ) - 完結おめでとうございますっ作者様の作品どれも大好きです!!ほんとにどタイプです(; ;)新作も楽しみにしています!頑張ってください! (2020年8月17日 18時) (レス) id: 555d662f3a (このIDを非表示/違反報告)
ぱるこ氏(プロフ) - 完結おめでとうございます!!すっごく読んでいて楽しい作品でした!またどこかで貴方様の作品に出会えますように(^ν^) (2020年8月16日 22時) (レス) id: f3351ce51f (このIDを非表示/違反報告)
あお(プロフ) - とても面白いです。この作品が更新されるのを毎日心待ちにしてます。更新大変だと思うので作者様なりのペースで頑張ってください!応援してます。 (2020年8月7日 22時) (レス) id: 9f253d2950 (このIDを非表示/違反報告)
諒(プロフ) - イライ&ナワーブさん» ご指摘ありがとうございます!お手数ですが、誤表記の話数をお教えいただけませんか? (2020年8月7日 22時) (レス) id: 20c69aa8ad (このIDを非表示/違反報告)
イライ&ナワーブ - とても面白いと言うかBL最高! (レオンではなくてレオナですよ) (2020年8月7日 21時) (レス) id: 1da65a8f09 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:諒 | 作成日時:2020年8月2日 13時