硬貨21枚 ページ22
角砂糖を3つ落とし、紅茶が揺れる。
それを軽く見つめながらルークの話に相槌を打っていた。
お茶でもどうか、と誘われてポムフィオーレへと足を運んだA。
あれから何度かルークの部屋に招かれたりしていた。
普通にお金をもらえるからという理由で来ていたのもある。
が、ルークの話を聞くのが純粋に面白かった。
2つのエメラルドに映る世界はとてつもなく美しい。辺鄙なものでも全て綺麗だと感じている。
そのルークの感性がAにとっては奇怪で、とても羨ましかった。
濁った視界じゃ花すら綺麗に映らない。
ルーク「ムシュー・ミツバチは本当に聞き上手だ。すまないね、つまらない話を聞かせてしまって」
『つまんなかったら適当に返事してるから大丈夫！気にせず続けて？』
ルーク「…誰にでも、そうやって優しい顔をするのかい？」
いつも余裕そうな顔とは打って変わって、悲しそうに微笑んでいた。
いつも飄々としている彼が、自分の手の上で揺さぶられているという事実に笑みを零す。
この人、本当に僕のこと好きなんだ。
『他人に興味がないのは知ってるでしょ。そんな僕がわざわざここまで足を運んでる。狩人サマが何時でも手を出せる範囲に。…まだ言葉が必要なの？』
ルーク「………これじゃあどちらが捕食者かまるで分からないね」
『自分のことを捕食者だって思ってるうちはずーっと被食者なんだよ』
そっとルークの頬に手を滑らせて目を見据える。
エメラルドには優しい顔をしたAが映っていた。
こんなに気に入ったのは初めてだった。今まで他人なんかどうでも良かったのに、見かけるとつい笑ってしまう。
自分を出せるのはルークの前だけ。でも愛の狩人はそれに気付いていないらしい。
ルーク「チップを払うだけでキミの時間を買えるだなんて本当に幸せだよ」
『でも僕のことは買ってくれないんだ？』
ルーク「メインディッシュは最後まで残しておくのが私の美学なのさ」
『えぇ、僕なら取られる前に食べちゃいたい』
渡された封筒を懐にしまってティーカップに口をつける。
どれだけ近付いたって手を出す素振りを見せてくれない。
そんなルークにもどかしささえ覚えていた。
手っ取り早く手を出してくれていたら、なけなしの罪悪感だって劣情とともに流せるのに。
ルークがAという檻の中に閉じ込められているのか。
はたまたAがルークの手の内なのか。
真相は2人にも、誰にもわからなかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 667人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ツイステ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
しお(プロフ) - 完結おめでとうございますっ作者様の作品どれも大好きです！！ほんとにどタイプです(; ;)新作も楽しみにしています！頑張ってください！ (2020年8月17日 18時) (
レス) id: 555d662f3a (このIDを非表示/違反報告)
ぱるこ氏(プロフ) - 完結おめでとうございます！！すっごく読んでいて楽しい作品でした！またどこかで貴方様の作品に出会えますように（＾ν＾） (2020年8月16日 22時) (レス) id: f3351ce51f (このIDを非表示/違反報告)
あお(プロフ) - とても面白いです。この作品が更新されるのを毎日心待ちにしてます。更新大変だと思うので作者様なりのペースで頑張ってください！応援してます。 (2020年8月7日 22時) (レス) id: 9f253d2950 (このIDを非表示/違反報告)
諒(プロフ) - イライ&ナワーブさん» ご指摘ありがとうございます！お手数ですが、誤表記の話数をお教えいただけませんか？ (2020年8月7日 22時) (レス) id: 20c69aa8ad (このIDを非表示/違反報告)
イライ&ナワーブ - とても面白いと言うかBL最高！ (レオンではなくてレオナですよ) (2020年8月7日 21時) (レス) id: 1da65a8f09 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：諒 | 作成日時：2020年8月2日 13時
