206.奮励とオンボロ ページ1
「あら、ユウじゃない。何か用?」
ヴィルは髪を揺らして振り返った。
ここ1ヶ月ほど住居の面で世話になった少女。
彼はストイックなので、自衛手段の持たないユウの近くで自我を失ってしまった自分を悔いていた。
「この間の件について、NRCトライブで話したいことがあるのだけど。またオンボロ寮に集まっても良いかしら。」
「あ、はい!もちろん...って、そうじゃなくて。先輩、指導は大丈夫でしたか?」
アルタイルへの不信感をそれとなく植え付けようとする詭弁を右から左へ聞き流しながら、ヴィルは改めてユウの格好を眺めた。
髪は切り揃えられずパサつき、枝毛が所々に見える。
肌は荒れているが、これは栄養失調などではなく栄養過多によるものだ。
ニキビだっていくつか散らばっている。
合宿メンバーのついでに最高のコンディションにしてやったはずなのに、短時間でこんな状態になるということは、あれから直ぐにケアを止めて緩んでしまったのだろう。
ヴィルは常々思っている。
外見が悪くても中身が良ければいい、なんてことは間違いだと。
外も中も美しい方が良いに決まっているし、顔の造りは仕方ないにしても肌や髪が美しくないのは努力が足りていない証拠だ。
実力が無いなりにも努力さえしないのに一丁前に意見を述べる奴にろくな人間はいない。
その点で、ヴィルはユウを好きではなかった。
異世界から来た?だから学校の勉強についていけない?
それはご愁傷さま。
ならそのお友達と遊んでいる時間を勉強に回せばいいじゃない。
ヴィル先輩は綺麗で羨ましいです?
あらありがとう。
羨ましいならアンタも自発的にやりなさいよ。
そんな努力も頭も足りていない女に、アルタイルを貶められるのが不愉快だった。
「アンタ、あいつの何を知ってるっていうの?」
「...え、っと。ヴィル先輩?」
ヴィルは知っていた。
自分も芸能人だから分かる。
仮にも名門校に在籍する中で、二足のわらじはとても大変だということを。
学校の課題、生徒会の仕事、それから国王としての仕事。
少し考えるだけでも、きちんと眠れているのか疑問に思うほどのキツさだ。
その割りに肌も髪も綺麗なのは少し解せないけれど。
「異世界から来たからって努力しなくていい理由にはならないわ。ましてや努力する人へ中傷していい理由にもね。」
相手する時間が無駄なので、ヴィルはさっさと背を向けて遠回りして寮に戻ることにした。
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あお - 今日この作品を見つけて、一気に読みました!!とても面白かったです☺男主が魅力的でとても楽しくお話を読ませていただきました!お体に気をつけて更新頑張ってください!! (3月30日 23時) (レス) id: 63ae223e49 (このIDを非表示/違反報告)
葱(プロフ) - 遅ればせながらお誕生日おめでとうございます。更新をずっとお待ちしておりました!これからも無理のない範囲で更新頑張ってください! (3月29日 1時) (レス) id: ec1bbf9e0f (このIDを非表示/違反報告)
弐番目の子(プロフ) - 遅れました!お誕生日おめでとうございます!㊗️成人!これからも応援しています! (3月24日 15時) (レス) @page15 id: ba785ca851 (このIDを非表示/違反報告)
白 - お誕生日、おめでとうございます!!!!久々の更新でとても嬉しいです!これからも応援してます!!!! (3月24日 9時) (レス) id: 009b20195a (このIDを非表示/違反報告)
ゆきっき(プロフ) - 少し遅れましたが、お誕生日おめでとうございます!更新が見られて嬉しいです! (3月24日 0時) (レス) @page15 id: e77387d96a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:陽炎 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Kagerouhp/
作成日時:2022年8月31日 0時