P−23◆おと…… ページ26
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「オレ様は猫でもねぇ〜っ!! こんな首輪、すぐに燃やして……」
火を吹くべく大きく息を吸ったグリムの身体が、突然強張ったように固まる。空気でやや膨らんだ腹が虚しく萎んでいった。
「あ、あれ? 炎が出ねぇんだゾ!」
こんな筈じゃ、と言わんばかりのグリムの慌てぶりに反して、リドルは冷静さを崩さない。
得意げな顔を浮かべることなく、あくまで何でもないことのように冷めた声で告げる。
「ふん! ボクがその首輪を外すまでキミは魔法を使えない。ただの猫同然さ」
「に、にゃにー!? オレ様はペットじゃねーんだゾ!」
「心配しなくても、キミみたいなペットこっちから願い下げだ。……ま、学園からつまみ出される頃には外れてるよ」
──「にゃ」って言ってる……やっぱ猫なんじゃ?
怒り心頭なグリムと淡々とした様子のリドルの温度差には目を見張るものがある。
この状況に相応しくない呑気なことを考えているAもAだと言うべきか。
「大丈夫ですか!?! 怪我は!!?」
「わっ!?」
前触れなしに降ってきた声に、Aが思わず頭を覆って身を屈める。しかし、声の主を頭が判断するのもほぼ同時だった。
また状況がややこしくなることを……などと思いながら顔を上げる。
「おと……が……くえんちょ」
私のバカ。
大体2、300個程度のその言葉がAの頭の中を3秒ぐらいかけて通過していった。体感20秒と言ったところか。
「学内ではお父さんのことをちゃんと『学園長』と呼ぶ」という自らに課したマイルールをしっかり守るべくあんなに練習したというのに。
途中から微妙に恥ずかしくなってきたけど継続したというのに。
「お父さんで良いんですよ〜〜」とニコニコしながら言われたけれど軽くあしらって、反抗期なのかと父親まで昼夜悩ませたというのに。
「おと……?」
「音?」
「可愛い」
最後の派閥はさておくとして、混乱状態にある新入生達に更なる謎というか何というかを投げ込んでしまった。
どうしよう。もういっそグリムに破茶滅茶に暴れ回ってもらって記憶を塗り替えられるか挑戦してみようか。
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ヒメアミ(プロフ) - もちうさぎさん» お話が進んだりユニーク魔法とかがお披露目になったりすると多分速攻でバレる(?)と思うんですけど、一応某塔の上のプリンセスを元ネタにしてます……!😌 (4月9日 14時) (レス) id: 773d896b8c (このIDを非表示/違反報告)
もちうさぎ - 夢主ちゃんのモデルって誰ですか! (4月9日 5時) (レス) id: c2ca67a91e (このIDを非表示/違反報告)
ヒメアミ(プロフ) - ゆあさん» マジですか何よりでございますわ!!🥰彼にはただのマブで終わらず頑張ってほしいですね(誰目線?) (4月7日 17時) (レス) id: 773d896b8c (このIDを非表示/違反報告)
ゆあ(プロフ) - もう今回も最高でございましたわ!エースと仲良くなっちゃって!そのままくっつけー!!という願望 (4月6日 22時) (レス) @page20 id: ce509c1850 (このIDを非表示/違反報告)
ヒメアミ(プロフ) - ゆあさん» コメントありがとうございます!! 続け方には気を付けてるのでそう言っていただけて何よりです〜〜😭 頑張ります!!💪🏻 (4月4日 12時) (レス) id: 773d896b8c (このIDを非表示/違反報告)
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