学園長の「愛娘」【ツイステ】

P−0◆本当のハッピーエンド ページ3

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──ああ、また(・・)無理だったんだ。


Aが直感的に、他人事のように、そう感じ取る。

周りに広がるのは、目を背けたくなるような惨状。

響き渡るのは、何かが崩れ落ちるような轟音と──目の前に居る大きな獣(・・・・)の咆哮。

見上げるような大きさのその四足獣は、瞳を爛々と蒼く光らせており、耳の中や首の周りではそれと同じ色の蒼い炎が燃え盛っている。

人の身体程度簡単に噛み砕けてしまいそうな巨大な牙を覗かせながら、その獣は再び吠えた。

空気がブルブルと震える。
蒼い炎が揺らめく。

視界の隅に映るのは、Aと同じ、金色の柄が入っている黒いローブを身に纏った人々。

懸命に叫んでいる者も居れば、魔法攻撃を放つ者、力なく地面に横たわっている者も居る。


戻ってきてよ(・・・・・・)。


喉を枯らす勢いでAがそう叫ぼうと、事態は何一つ好転の気配を見せなかった。


──お願い、お願いだから。


Aのその消え入りそうな声を、四方八方で聞こえる轟音が掻き消す。

獣が口を大きく開いて、蒼い炎を吐き出した。
それは一瞬にして、飛び交う雷や炎を飲み込む。


「A──ッ」

「Aちゃん！！」

「A！！」


名前を呼ばれる。何度も呼ばれる。
どれもこれもが、切羽詰まった様子をありありと感じるような、そんな声だった。


──危ない、下がっていろ、早く逃げろ。


そうはいかない。
そんな事をするわけにはいかない。
だって、このままじゃ、皆が──。


「A避けろ！！」


その声が耳に入ると同時に、咄嗟に体を動かして後ろに跳ぶ。
ついさっきまでAが立ち尽くしていた場所は、獣の集中砲火の餌食となっていた。
まただ、また(・・)守ってもらった。

ぐらついた体勢を立て直しながら、Aは自分自身に問いかけた。


──私に今出来ることは何？


──そうやって、ただ庇われること？


──違うでしょ、A・クロウリー。


──貴女には、やらなきゃいけないことがある！


先端に魔法石がはめられた万年筆──マジカルペンを前に向ける。
生温い熱風が、ふわりとAの纏うローブを揺らした。



「──────」



──そう。


──私が、


──皆に、


──絶対に……



──本当のハッピーエンドを見せてやる──!



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