P−12◆距離感近めな同級生 ページ15
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「タブレット……?」
寮長達の近くでふわふわ浮いている、液晶画面のついた長方形の平たい物体。特徴を抜き取って丁寧に表してみても、やはりあれはタブレット以外の何物でも無いだろう。……けれど何故こんな場所にタブレットが?
Aは前の方に並んでいたため、その画面に映る何かのアイコンのようなものもしっかり見えたが、だからといって何かが分かったわけではない。分かるのはあれがタブレットということだけ。謎だ。
──背伸びをしたり首を伸ばしたりしてタブレットを観察している間に、Aのそのぴょこぴょこした挙動が隣に並ぶ新入生の目に留まったらしい。
「っぱ気になるよなー、アレ」
「ぅえっ!? ……って、何だ……」
反射でビクリと跳ね上がった肩をまたすぐに下ろして、Aがはぁと安堵の息を吐く。
「何だ」と安心するほど「この人に話しかけられたらヤバイ!! アウト!!」みたいな特定の人物がいたわけでは無いが、気が付けばそう口にしていた。
改めて、声をかけてきたのがどんな人物なのか探ろうと相手を見上げる。
彼のチェリーレッドの瞳と目が合った瞬間、その口から「へ、」と間の抜けた声が飛び出たのがAの耳にもばっちり飛び込んできた。
「じょ──いやいやいやそんなまさか……」
こっちに背中を向けてから、「ここ男子校だし」とか何とか自分に言い聞かせるようにぼそぼそと呟く目の前の同級生に、Aは思わず心の中で詫びた。そのまさかです。ごめんなさい。
一通り呟き終わった彼はくるっとまたこちらを振り向くと顔を近付けてきた。思わずたじろいで、Aが一歩退がる。
「……よく性別詐欺とか言われねえ?」
「エッ……あ〜、う、ウン……ソウダネ」
明らかに、「いや女子だし女子に見えるのは当たり前だよ」とか真顔で言い出して一度たりとも疑われたことのない詐欺の冤罪を晴らす空気ではないため、Aはやむなくやや棒読みの返事を返した。
少し落ち着いたのか、相手もあははっと軽やかな笑みを見せる。
「だよな〜。可愛すぎてビビった」
「ソッカ〜」
──すっごく言い出せないんだけど!!!
同性だ(と言う認識がある)からこそ何の躊躇いも無く口に出せる言葉というのは一定数存在する。今のなんてまさにそれだ。
これはまずい。
初めて話したナイトレイブンカレッジの同級生だというのに、入学後性別が知れて気まずい感じになったら困る。同じクラスとかだったら尚のこと困る。
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ヒメアミ(プロフ) - もちうさぎさん» お話が進んだりユニーク魔法とかがお披露目になったりすると多分速攻でバレる(?)と思うんですけど、一応某塔の上のプリンセスを元ネタにしてます……!😌 (2023年4月9日 14時) (レス) id: 773d896b8c (このIDを非表示/違反報告)
もちうさぎ - 夢主ちゃんのモデルって誰ですか! (2023年4月9日 5時) (レス) id: c2ca67a91e (このIDを非表示/違反報告)
ヒメアミ(プロフ) - ゆあさん» マジですか何よりでございますわ!!🥰彼にはただのマブで終わらず頑張ってほしいですね(誰目線?) (2023年4月7日 17時) (レス) id: 773d896b8c (このIDを非表示/違反報告)
ゆあ(プロフ) - もう今回も最高でございましたわ!エースと仲良くなっちゃって!そのままくっつけー!!という願望 (2023年4月6日 22時) (レス) @page20 id: ce509c1850 (このIDを非表示/違反報告)
ヒメアミ(プロフ) - ゆあさん» コメントありがとうございます!! 続け方には気を付けてるのでそう言っていただけて何よりです〜〜😭 頑張ります!!💪🏻 (2023年4月4日 12時) (レス) id: 773d896b8c (このIDを非表示/違反報告)
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