P−9◆夏から秋 ページ12
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上から下へ、高いところから低いところへ。
夢中ではたきがけをして、ゴースト達に天井に張られた蜘蛛の巣も払ってもらって、落ちた埃を掃除機で吸って、窓や壁も拭いて。
箒で掃除をしたあとモップをかけて、床を磨いて──で、早数時間。
「つ、疲れた〜〜……」
「こんなに働いたのは何十年振りだぁ?」
「でも随分見違えたぞ!」
「ほんとほんと! みんな、ありがとう! 特に天井の蜘蛛の巣とか、すっごく助かった!!」
Aのその言葉と晴れやかな笑みに、ゴースト達の口角がでれりと上がる。
「いやぁ〜、何のこれしきお安い御用!」
「さぁ次はどうする!?」
「わ、やる気凄い……! ……でももうちょっと休憩しない?」
「「「さんせーい!」」」
えへへ、と天使のものか女神のものかの判断が議論を呼ぶ微笑みを浮かべるAは、まだ知らない。
30分後ぐらいに、「やはり不安です!!!」と飛び込んできたクロウリーが、ゴーストと協力して仲良く掃除をしている娘の姿を見て大号泣するということを。
どう反応すべきかという答えを導き出せず、重い沈黙の中に父親の嗚咽だけが響き渡るという地獄の時間が彼女を待ち受けているということを。
用事があるなり何かを取りに来るなりで学園に戻ってきていたり、はたまた何かの事情で帰郷できなかったりした生徒達に、その姿をちらっと見られたり見られなかったりするということを。
まさかの入学前から、Aの一目惚れられ伝説は刻まれ始めていたということを。
そして──。
入学式を終えたあと、ゴースト達との
────
日の落ちる時間がだんだんと早くなって、生ぬるい風ではなく冷たい風に吹かれるようになる。
そんな感じのことで人生16回目の秋の訪れを実感する今日この頃、Aは先程からかれこれ20分ぐらいベッドの中でじっと天井を見つめていた。
寝付けない。
早くぐっすり眠らなければいけない、分かっている、けれどそう思えば思うほど目が冴えてしまう。
既に寝返りの回数は、両手両足の指をフル稼働して数え切れるかどうかというところまで来ていた。
何せ明日の今頃には、ナイトレイブンカレッジ生の仲間入りだ。
嬉しい、わくわくする、そんな色鮮やかなプラスの感情を、上手く言い表せない不安や焦りが上から黒く塗り潰していく。
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ヒメアミ(プロフ) - もちうさぎさん» お話が進んだりユニーク魔法とかがお披露目になったりすると多分速攻でバレる(?)と思うんですけど、一応某塔の上のプリンセスを元ネタにしてます……!😌 (2023年4月9日 14時) (レス) id: 773d896b8c (このIDを非表示/違反報告)
もちうさぎ - 夢主ちゃんのモデルって誰ですか! (2023年4月9日 5時) (レス) id: c2ca67a91e (このIDを非表示/違反報告)
ヒメアミ(プロフ) - ゆあさん» マジですか何よりでございますわ!!🥰彼にはただのマブで終わらず頑張ってほしいですね(誰目線?) (2023年4月7日 17時) (レス) id: 773d896b8c (このIDを非表示/違反報告)
ゆあ(プロフ) - もう今回も最高でございましたわ!エースと仲良くなっちゃって!そのままくっつけー!!という願望 (2023年4月6日 22時) (レス) @page20 id: ce509c1850 (このIDを非表示/違反報告)
ヒメアミ(プロフ) - ゆあさん» コメントありがとうございます!! 続け方には気を付けてるのでそう言っていただけて何よりです〜〜😭 頑張ります!!💪🏻 (2023年4月4日 12時) (レス) id: 773d896b8c (このIDを非表示/違反報告)
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