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『もういい。……お腹いっぱい』
そう告げるAの口元をヴィルがハンカチで拭う。ケイトとトレイが笑いながらその様子を眺めていた。
和やかな空気が流れるそこに、また一人近付く影。座っている彼らの上から覗き込んできたのは、マレウスであった。
ざわっ、と食堂に騒めきが走る。
キングスカラーとドラコニアが出会ったぞ。喧嘩になる。離れろ。
そんな会話が小声で行われる中、マレウスはAの頭に手を置いた。『……誰?』とAが顔を上げる。手の主がマレウスだと分かると、Aは嬉しそうに振り向いた。
『……マレウス、おはよ』
「あぁ。今日は来ていたのだな」
『ん……。魔法史の授業、だけ。あとは帰る』
「……そうか」
Aの言葉に、心なしかしゅんとするマレウス。どうやら一緒に授業を受けたかったようだ。
そのことに気付かないAは、そろそろ帰ろうかななんて言って立ち上がる。その腕をマレウスが掴んだ。
「……寮の部屋まで送ろう」
『……良いの?』
マレウスの提案に、Aが笑った。レオナやヴィルにバイバイして、Aがマレウスの服の裾を引っ張る。
「あぁ」と笑って、マレウスがしゃがんだ。また騒めきが大きくなる。それを気にする様子もなく、Aはその背中に自身の身体を預ける。
まぁ、所謂おんぶの状態になった二人は言葉を交わしながら食堂を出ていく。食堂の喧騒は、一際大きくなった。
『人の子?……へぇ、面白い子が来たんだ……』
「そうだな。僕を見てツノ太郎とあだ名をつけたくらいだ」
『ツノ太郎!……ふふ、面白いねそれ』
マレウスの背中に身体を預けて、Aが笑う。僕におんぶをさせるお前も中々だがな、と心の中で笑ってマレウスは足を進めた。
Aの声に段々と眠気が混じっているのが分かる。これはもうそろそろ寝落ちするだろうか、とマレウスが思った時。
背中に伝わるAの重さが、急に増えた。……いやまぁ、増えたと言っても全然軽いのだけれど。
「A、寝たのか」
返事はない。マレウスは笑みを零して、サバナクローのAの部屋を開けた。
その真ん中にあるベッドにAを寝かせて毛布をかける。部屋のカーテンも閉めてやって、電気も消して。
くぅくぅと寝息を立てるAに笑って、マレウスはAの部屋を出た。
「おやすみA、良い夢を」
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紫苑(プロフ) - え、かーわーいーいー!何この子愛でたい甘やかしたい守りたいの三拍子が揃う庇護欲をそそられる子なんですけど!ショタ!?ショタですか!?それともロリですか!?ハート撃ち抜かれました (3月4日 15時) (レス) @page12 id: 89604d43a6 (このIDを非表示/違反報告)
遊ちゃん_SKZ(プロフ) - 続きを恵んでほしい、、!!!そしてラギーとの絡みが見たいッッッ!!!!! (2023年4月12日 16時) (レス) @page12 id: fe8355afed (このIDを非表示/違反報告)
yumi(プロフ) - どうか続きを恵んでください! (2023年3月14日 18時) (レス) @page11 id: 2ee13aea9b (このIDを非表示/違反報告)
zfっっっs - こむぎさん» モデルさんとか、綺麗な人はそのぐらいですよ。。。まぁ文字だけ見たら、そう感じるかもしれませんね。。。たしかに十分軽いですけど。。。 (2022年1月4日 13時) (レス) @page12 id: 9afd2abc65 (このIDを非表示/違反報告)
まる(プロフ) - タイトルを見て面白そうと思ったら、まさかのテロと同じ作者様…安定の面白作品ですね…!!続き楽しみに待ってます!…所でですが、所々に夢主の名前が変更されていない箇所があるので、名前を変えて読み直すことをお勧めします。 (2021年12月23日 6時) (レス) @page6 id: fb6be3cd03 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:チーズ鍋 | 作成日時:2021年11月30日 18時