093 ページ43
Aちゃん大丈夫そうですか、とパタリという音と同時に聞こえてきたのは先程呼んだはずの水上だった。多分、俺や川上が呼ぶ前からこっちには向かってきていたんだろう。川上と同じく手にはナイロン袋をぶら下げ、中身もほとんど一緒だった。少し違うのといえばうどんや雑炊など、食べやすい主食類が入っていたことだ。
直ぐに2人はやってきて、水上はAちゃんの姿を見るやいなや直ぐに頬に手を重ね、あらかたの体温を計っているようだった。ちょっと暑いかな、なんて独り言を零すと冷えピタ剥がすね、とゆっくりと剥がしていった。
｢まだ病院にも行ってないんでインフルエンザかもしれないですね...そうなってくるとすぐに熱を下げるのは悪手になるので、今はしんどいかもしれませんけど氷枕だけでAちゃんには過ごしてもらいましょう｣
本当は汗も少しかいてるから服を脱いで拭いた方がいいんだけれど、と口篭る水上に確かになあ、と思うしかなく、ぐっすりと眠っているAちゃんをそっとしておこうと、扉を静かに開閉しようとおもったが、微かに彼女の声が聞こえたきた。俺にも、川上にも聞こえなかったが水上には聞こえていたそうで、大丈夫だよ、と声をかけていた。1人だと心細いそうなので、寝付くまでここ居ますね、と言う彼を止めるすべもなく、わかった、と俺と川上は作業に戻った。
記事を書いているが一向に進まない。ちらりと斜め前の川上を見ると同じようだったようで、キーボードの上で手は止まっていた。Aちゃんが心配なのはもちろんだけど、それ以上に、あの中で一番なのはやっぱり水上なのだと、推しだとかそういう以前に彼らは仲が良く、信頼しあっている関係なのだと突きつけられたみたいで、心が沈んでしまう。
確かに俺は編集長という立場で、須貝さんの伝できた彼女からしたら遠い存在かもしれない。だけど、もっと俺が年上の余裕を見せていれたらだとか、医学のことについて詳しかったらだとか、...叶わないけれど、同い年だったらだとかを考えていくと、もしかしたらあの水上の立場は俺だったかもしれないのに、なんて考え込んでしまう。自分でも思ってる以上に、俺は彼女に惚れ込んでいるみたいだった。...それを表立っては見せられないし、見せるつもりもないけれど。彼女の1番になれなくてもいいから、せめて彼女の心の拠り所になれるように、もっと先輩としても、編集長としても頑張ろうと、知識から画面の文字へと繋げるのを再開した。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 462人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
おとわ(プロフ) - ゆっぴ/唯華cさん» コメント、リクエストありがとうございます...！今の小話が終わったら書かせて頂きます！ (2019年12月6日 8時) (
レス) id: c8d4633da7 (このIDを非表示/違反報告)
ゆっぴ/唯華c(プロフ) - 初コメ失礼します！頭楽しく拝見させていただいてます！リクエスト大丈夫ですか？風邪でふらふらな主人公ちゃんのお話が読んでみたいです！これからも応援しています！ (2019年12月5日 23時) (レス) id: 7ff6de5a8e (このIDを非表示/違反報告)
たそ。(プロフ) - おとわさん» そんな言ってもらえるほどの奴じゃないですよ！！こんな奴で良ければ仲良くしてやってくださいな。 (2019年9月17日 19時) (レス) id: 1c4af94c04 (このIDを非表示/違反報告)
おとわ(プロフ) - たそ。さん» コメントありがとうございます！たそ。様得なら何よりです...！ありがたい言葉を励みに頑張ります！！ (2019年9月17日 2時) (レス) id: c8d4633da7 (このIDを非表示/違反報告)
たそ。(プロフ) - 続編おめでとうございます！須貝さんがお兄ちゃんは我得すぎるので本当にありがとうございます←これからも更新楽しみに待ってます！！ (2019年9月16日 20時) (レス) id: 1c4af94c04 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：おとわ | 作成日時：2019年9月15日 23時
