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部屋に戻る途中でよしあきさんと会った。ほんとはみんなで温泉に行くつもりだったけど、みんなもう疲れて部屋のお風呂で済ましたらしい。湯上りで浴衣を着ているよしあきさんは、昼の袴の時とは印象がまた違って、今は少し大人のように見える。頬が少し赤らんでるからかもしれないけど。
「湯冷めしちゃうかもしれないけどさ、折角ならちょっと時間貰ってもいい?屋上、足湯とかもあるらしいよ」
素敵なお誘いにぜひ、と私はよしあきさんの隣に行く。こうくんに言わなくていいのかな、と思ってたけど、もうこうくんはお風呂も入って既に夢の中にいるらしい。無理させちゃったかな、申し訳ない。
エレベーターで屋上に上がる。元々旅行シーズンではないからかもしれないけど、お客さんはいなかった。ホテル自体に泊まっている人が少ないのかな。貸切だね、なんて笑うよしあきさんと一緒に、1番眺めのいいところに向かう。
東京で見るものとは違う、和に溢れた夜景に目を奪われた。私、こんな素敵なところで過ごしていたんだな、なんて思ったりもして。すこしぬるい足湯に漬かって、いきをはく。隣には少しだけ私よりも高いところに目線があるよしあきさんがいて、他の人がもしここにいたら、カップルみたいに見えるのかな、なんてらしくもないことを考えてみる。
目はぱっちり二重で、ぷっくりとした涙袋。綺麗な形の唇に高い鼻。少しだけ濡れた前髪が目にかかっていて、どこから憂いのある雰囲気を漂わせるよしあきさんは、贔屓目で見なくても美少年、だ。
少しの間見つめていると、見すぎ、とはにかむよしあきさん。後ろの夜景も相まって本当に綺麗で、私は何も言葉に出来ずに反対をむいてしまう。
いつもは可愛らしくて、女子顔負けの女の子らしい人だと思っているのに、さっき視界に映った喉仏が、よしあきさんはれっきとした男性なんだと知らしめてくる。
「よしあきさん、かっこいいですね」
「へへ、急に褒められても何も出ないよ?」
目じりを下げて笑うよしあきさんの頬がさっきよりも赤い気がするのはなんでだろう、とか考える隙もないくらい、Aちゃんだって、と近付くよしあきさん。
「...Aちゃんだって、可愛いよ。ほんとに。僕が、2人きりになりたいな、と思うくらい」
帰ろっか、と差し出されかけた手を目で見つめて、無言でよしあきさんの後ろについて行く。行きよりも気まずくなった気がするのに、この胸の鼓動が早く感じるのは関係あるのだろうか。
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かすがわ(プロフ) - 楽しく小説読ませていただいてます! 少し気になっしまったので、言わせていただくのですが、福良さんは河村さんのこと確か「河村」呼びだった気がします…! (2019年9月19日 23時) (レス) id: 13a71039dd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おとわ | 作成日時:2019年9月5日 0時