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「飯も食わねェでどこ行ってんだテメェ」
「お、……おおきに」
ずいっと乱暴にお皿を差し出してきた勝己。
沢山盛られた具材に少し引きながら口に運ぶ。喉を通る食材は思った以上に美味しい。
「おいしい」
「さっさと食って寝ろ」
「寝る時は僕の横に来てな。他人の寝息が聞こえたら気持ち悪くて寝られへんねん」
「繊細かよ、めんどくせェ」
1番端っこに敷かれた布団に横になりにんまりと笑って甘えるようにポンポンと横を叩くとみるみるうちに怖い顔へと変わっていく勝己。
「シネ!!」
勢い良く閉められた扉が大きな音を立てる。
皆が何事かと顔を見合わせるも、彼がキレることは珍しいことではないので、誰も気に止めない。
相変わらず、照れ屋さんな彼を思い出して自然と零れる笑みを隠すように口元を押さえた。
皆がお風呂に行き、大部屋には僕1人。
静かな室内は心地よくて自然と瞼が落ちてしまいそうになる。
今日1日で疲れきった身体には布団がとても気持ち良く感じる。
「寝たのか?」
扉の開く音を微かに感じながら、背後から聞こえる焦凍の声に僕は応えなかった。
所謂、狸寝入りというやつに彼は疑う素振りを見せない。
「……椿」
僕の髪を細い指が通るくすぐったい感覚に思わず身をよじる。
いったい彼は何をしているのか…。
すぐ近くに感じる彼の気配にいたたまれない気持ちでいっぱいになる。
お風呂上がりのせいなのか、僕の頬を撫でる暖かな彼の手の温度にぐっ、と瞼に力を込めた。
駄目だ、身の置き所がない…。
脈打つ心臓の音が彼に聞こえるんじゃないかと思うくらい大きく速い。
再びドアの閉まる音を聞いて、僕はようやく解放された緊張感に大きな溜め息をついた。
「………勘弁してや」
熱い顔をなんとか皆が来る前に冷まそうと、窓を開ける。
夜になると少し冷たい風は、あっという間に僕の熱を冷ましてくれた。
なんなん…眠気が吹っ飛んでもうたやん。
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朝ギ(プロフ) - じゃがりこさん» とても嬉しいお言葉、ありがとうございます。励みなります! (2018年3月19日 23時) (レス) id: 94da739f3c (このIDを非表示/違反報告)
朝ギ(プロフ) - 星鴉さん» ありがとうございます!私の限られた表現力で表せることは少ないですが頑張ります! (2018年3月19日 23時) (レス) id: 94da739f3c (このIDを非表示/違反報告)
じゃがりこ(プロフ) - ただただ美しい 椿が美しい 一言で言えば大ファンです (2018年3月18日 1時) (レス) id: daac9369bf (このIDを非表示/違反報告)
星鴉(プロフ) - 美しい表現に惚れました!!主人公君大好きです!応援してます!! (2018年3月10日 1時) (レス) id: 3edde29704 (このIDを非表示/違反報告)
朝ギ(プロフ) - 薔薇さん» ありがとうございます!楽しんでいただいて何よりです! (2018年3月2日 20時) (レス) id: f0d5aace8d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:朝ギ | 作成日時:2018年1月21日 21時