【男主】落ちる様くらい綺麗に【僕のヒーローアカデミア】 (ページ45)

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｢僕に近付く為だけに殺された被害者の数〝８人〟その重み、理解出来る？｣

こんなに悲痛の叫びを含んだ椿の表情は今まで見たことがない。

小刻みに震える彼に気の利いた言葉をかける度胸が俺にはない。

｢これは誰にも言ってへんけど……あの日、犯人が化けてたのは焦凍、君の姿や｣

｢……俺…？｣

｢当時、僕には焦凍しか親しい友達おらへんやったからな。君に呼び出された僕は人気のない路地裏にだって君やと疑わへんかったから着いていった。そんな君の姿をした犯人が襲い掛かってきたから…君を殺してもうた。殺したはずの君が僕の側におる。それだけで恐怖やわ。君を殺してしまった罪悪感に飲まれそうやった。犯人と君は違う。そう分かってても……どうしても重なるんや…｣

初めて知る、椿の抱え込んでいたもの。

思わぬ所で関係してた自分。

必死に笑顔を取り繕って、接してきてくれたにも関わらず俺はなんて自分勝手だったんだ。

小さな椿の背に腕を回して力を込める。

思っていたよりもずっと細いその身体でこれだけのことを１人で抱え込んでいたなんて。

｢俺は、死んでねぇよ。それにお前が責任感じる必要ない。悪ぃのは全部犯人だ｣

｢…分かってるわ。でもまるで亡霊や……いっそのこと…君が死んで僕を楽にさせてや｣

素直に力無く身体を預けてくる椿からは懐かしい花の香りがする。

そっと俺の胸元に触れる椿にぞわりと鳥肌が立ったが、個性を使用してはいなかった。

｢焦凍の顔を見ると、あの時のことを思い出して殺してしまいそうになるわ｣

｢そんなんで死なねぇよ。…来たら全力で相手してやる｣

顔を上げた椿の顔があまりにも近く驚いた。

即座に反応した俺を見て、にんまりといつもの様に口角を上げる椿を見て、嫌な予感がした。

｢君ってほんまに僕の顔、昔から好きやね｣

｢………さっさと相澤先生探すぞ｣

｢無視せんといて｣

椿は昔から自覚しているであろう端麗な顔を姑息に使ってくる。それは大体悪巧みを考えている時。

突如、話しをすり替えた椿の意図は分からない。

ようやく壊したと思った彼の心の壁が、再び俺との距離を作る。

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