【男主】落ちる様くらい綺麗に【僕のヒーローアカデミア】 (ページ12)

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緑谷出久 side.

｢散らし損ねた生徒がおりまして…１名逃げられました｣

｢…………は？｣

ワープゲートの敵から〝死柄木弔〟と呼ばれた人物は彼の言葉に分かりやすく苛立ちを見せ、首元をガリガリと乱暴に掻き毟る。

｢さすがに何十人ものプロ相手じゃ敵わない。ゲームオーバーだ。あーあ…今回はゲームオーバーだ…帰ろっか｣

くるりと後ろを振り返り僕らに背を見せる死柄木弔。

これだけのことをしといてあっさり引き下がるなんて…

オールマイトを殺したいんじゃないのか！？これで帰ったら雄英の危機意識が上がるだけだぞ！

ゲームオーバー？何だ…何考えてるんだこいつら！

｢けれどもその前に平和の象徴としての矜持を少しでも、へし折って帰ろう｣

あまりにも突然のことに身体が反応出来なかった。

蛙吹さんの顔へと伸びる死柄木弔の手を視界の端で見ながら、脳裏に浮かぶのは崩れ落ちた相澤先生の肘。

｢本っ当かっこいいぜ、イレイザーヘッド｣

ひたり、と蛙吹さんの顔に手を添えた死柄木弔だったが傷だらけの相澤先生が個性を消したことにより彼女の顔が崩れ落ちることはなかった。

ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ…

さっきの敵とは明らかに違う！蛙吹さん！助けて…逃げ…っ！

考えるよりも早く、僕は個性を使い右手を大きく振りかぶり死柄木弔に向かう。

｢手っ…放せぇ！！｣

｢脳無｣

大きな音を立てて、何かに攻撃が当たる。

折れてない！？〝力の調整〟がこんな時に！出来た！？

うまくスマッシュ決まった！

やった……

煙が晴れて、僕の前に立ちはだかっていたのは死柄木弔ではなく相澤先生を組み敷いていたあの気味の悪い敵だった。

速っ…いつの間に…ていうか効いて…ない…！？

確かに手応えはあったはずなのに、敵は傷一つも受けていない。

｢いい動きをするなあ…スマッシュってオールマイトのフォロワーかい？まぁ、いいや君｣

がしりと脳無の手が僕の腕を掴み、引き寄せる。

あぁ…もうダメだ、と死を覚悟したときだった。

｢邪魔｣

綺麗な朱色が視界に入る。

微かに花の匂いが鼻を掠め、覚えのある後ろ姿に目を見開いた。

椿くんは僕の腕を掴む脳無に触れると、にんまりといつものように笑みを浮かべた。

ふわりと紅色の花弁が舞い、脳無の腕はだらりと下に降りる。まるで糸の切れたあやつり人形のように。

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