吹雪桜<FB777> ページ5
３月１日、この日は毎年雪がちらついていた。今年は、雪がちらつくというよりは吹雪だ。
修学旅行も雨が降っていたし、ことごとく天候に恵まれない学年だ。
「すごい吹雪いてるね」
「ね、私たちの学年雪男とか雪女多いみたいだよ」
「ある意味これも思い出じゃないかな」
静かになった教室の窓辺に寄りかかりながら、そんなことを言う。薄っぺらい内容の会話だけど、毎日ちょっとはこんな会話してたっけ。
「Aちゃんって泣かないの？」
「泣かないのって？」
「いや、寂しくないのかなーって」
少し考える。
卒業式の答辞の時に、周りの子達は結構泣いていた。けれど、特に感動的な内容の答辞でもなかったし、泣く準備はしていたものの泣けなかった感じだ。
「…Aちゃんに聞いた俺がバカだったよ」
「えー！なんでよ！！」
そういえばFBってどこに進学だっけ。確かパソコンの音楽の専門学校だったような気がする。
「FBって地元にいるの？」
「え？うん。専門にいるうちはそうするつもり」
「あー…そっか、FBとも離れちゃうのか」
「Aちゃん東京だっけ？」
FBの質問に頷いた。
やりたいことも見つからず、とりあえず一人暮らしがしたいという思いだけで東京に就職を決めてしまった。
「東京ってすごいなー！Aちゃんなら上手くやっていけるって！」
「何の根拠があってそう言ってるの…」
「なんとなくそう思うんだよねー世渡り上手そう」
「それどういう意味？別に体売ったりとかしないからね」
「いやいや！変な意味じゃなくて！」
そういえばFBとは中学からクラス全部一緒だっけ。
高校でも最初に話しかけてくれたのはFBだった気がする。あれ、その点では私FBに助けられてばかりじゃない？
そう思った時には、私の手は自分のブレザーの第二ボタンに伸びていた。
「ちょっ！？何してんの！」
「FB、これあげる」
ブチッという音と共に、ブレザーからボタンが取れた。それをFBの掌に無理矢理握らせる。
「FB、離れたらすぐに私のこと忘れちゃいそうなんだもん」
言っている途中に恥ずかしくなって、早口で捲し立ててそのまま立ち去ろうとした。けれど、FBの手が私の腕を掴んだ。
振り返った瞬間、FBが自分の第二ボタンを学ランから引き千切った。
「これでおあいこ。俺もAちゃんに忘れられたくないから」
「……忘れるわけないじゃん」
「約束だよ？」
別に恋人同士でもない。ただ、FBには忘れられたくないと思った。
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