【巨大企画】愛する君へ【実/.況.者】 (ページ32)

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「まぁ、ね。
実はと言う程ではないけど、グルちゃんを探してた所もある」
「俺か？」

こくりと頷くと、ほぉ、と楽しげな声に時間を取ることを許可された。
何時も忙しくしていた彼の時間のとり方は心得ている。だからこそ今日を狙ったのもある。
今日の用件、それはとても下らなくてとても大切なこと。

「グルちゃん、釦くれないかな」
「釦？ははぁ、釦ねぇ」

徐に自分の全て揃った釦を見下ろすグルちゃんは、頬杖をついて理由をきこう、と邪悪な笑みを浮かべた。

「えーと、今までグルちゃんには沢山お世話になったから、だから、グルちゃんと一緒にいた証が欲しいなぁって、この時期なら制服から貰いたいなぁって思ったし、それに、」

「わかった、わかった、ちょっと待て」

は、と彼を見やれば、慈悲深そうな笑みが私を見ていた。
なんで、そんな顔するの？まさか、子供の様だと思われているのではないのだろうか。

「さて、話は以上やな？付いてこい」

ふわ、とマントの端を翻して唐突に先を行く彼を追いかける。まって、と縋る声を反映してか、歩調はやや遅くなったが、それでも追いつききれない。
段々とすれ違う人の多くなる構内は、突然のグルッペン･フューラーの登場にざわつき始めた。

どうして、かっこいい、うつくしい、これがあの。

数多の声が彼に魅せられ堕ちていくのが、わかる。

私、こんな人になんて事を頼んだのだろう。結局ナンバーが近かっただけでこうして力の差は歴然としている。立場だってそう。

だから今彼は、移動している？

「A、此方」