六冊目「もしも魔法が使えたら」前編 ページ8
「もし魔法が使えたら、どんな魔法を使いたい？」
そんな、ありきたりな質問をいきなり雑談の中に投入した当人である少女をみると、彼女は本に視線を固定している。普通の人間が魔法使いとして活躍する話だったはずだ。
いきなり本を朗読しだすことが、彼女に関しては珍しくないためにその場に居た少女の幼馴染二人は、互いに視線を合わせ、その沈黙の中でそれは本の中のセリフだという結論に至り、そのまま雑談を再開した。
「ねえ、聞いてるんだけど、無視しないでよね」
少女が再びそう投げかけるように言った。二人がそちらを見れば不機嫌そうに二人をにらんでいる少女の姿。アキは少女を見やって尋ねた。
「……それ、もしかして私たちに言ってる？」
「あんたたち以外に、人いないでしょ」
放課後の教室。部活のある者たちは運動場やら体育館やらに駆け出していき、帰宅部も自宅へと駆け出していき、残ったのは帰宅部・暇人の三人組のみ。あんたたち以外に聞く相手いるの？と少女、リサは言った。
「いや、お前、独り言の可能性のほうが高いだろ」
「……否定できない自分が悲しい」
至極当然のように言い切ったタクの言葉に反論できない自覚があったらしいリサは、タクがひどいっ、両手で顔をわざとらしく覆った。が、あっけなく無視され、リサ自身もそれほど気にも止めずにその動作で床にたたきつけられる羽目になった本を拾い上げる。
「で、どうなの？」
どうしても気になる、と表情全体で訴えてくる。アキとタクは同時に宙を仰いだ。
「私は、空飛びたいかな。鳥さんたちと遊んでみたいなあ、なんて」
「アキ、ロマンチックだもんね」
リサは嬉しそうにそう言った。アキが顔を赤くして反論するが、あまり効果はないようで。タクも当然のごとくスルーして、そうだなあ、とぼやく。
「瞬間移動だな。学校遠いからだるいし」
タクらしい、とアキが苦笑し、リサがこの帰宅部、歩くことすら面倒くさがってる〜、と聞きようによってはブーメランなことを言ってタクを小突く。
「で、お前は？」
リサの子付きを面倒そうにはねのけ、そのまま問いかける。へ、と素っ頓狂な声が返ってきて、あのなあ、と漏らす。聞かれないと思っていたのか、という突込みは思わず飲み込んだ。
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高空 - 夏蜜柑さん» ありがとうございます！少しずつの更新になりますが暖かく見守って頂ければ幸いです。 (2018年3月4日 14時) (
レス) id: afb8e92214 (このIDを非表示/違反報告)
夏蜜柑(プロフ) - はじめまして！好きです！言葉の選び方がとっても綺麗でもう最高です…！更新楽しみにしてます！！ (2018年2月26日 1時) (レス) id: ec14c5022d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：高空 | 作成日時：2018年2月25日 9時
