赤菊の君【S】1. ページ17
母親のお古の高そうな着物と無駄に濃い化粧。
ちらりと横目で見た窓ガラスに映るのは、普段の自分とはかけ離れた姿。
窮屈な格好に加えて、何故ここに来させられたのかを思い出してうんざりする。
……顔に出てなきゃいいけど。
事の発端は、受付嬢をしている姉がとある大きな会社の会長さんに見初められたこと。
見初めたと言っても会長さんはもうおじいさんで、どうか自分の跡取りの孫と結婚をしてくれというのが要望だったらしい。
大事な取引先だから断るわけにもいかなくてとりあえずお見合いだけでも…となったんだけれど。
彼氏がいる姉はお見合い前日にとんずらしやがった。
いくら金持ちでも、お見合いなんかするような人は歳がいってるかブサイクだろうからって。
何だその勝手な理由は、と怒りたいところだけどなんとなく気持ちは分かる。
それでお鉢が回ってきたのは彼氏のいない私。
大学が休みの日に母親の突撃を受けて、良く分からないうちに着替えと化粧をされてここにいる。
そこまで思い出してもう一度、隣の母親に聞こえないようにこっそりため息をついた。
「失礼します」
いい加減にじっと座っているのが辛くなった頃に、襖の奥からそう声がかけられる。
思わず背筋を伸ばしてしまうような凜とした声。
そして静かに正面に座った男の人を見て、心からここに来たことを後悔した。
「初めまして、櫻井翔です」
恐い、この人めちゃくちゃ恐い。
「は…初めまして。水月優里です」
声が震えそうになるのを堪えて、姉の名を名乗る。
見た目は普通の好青年。
いや、普通というには整いすぎてる顔立ち。
いわゆるイケメンってやつ。
でも真っ直ぐにこっちを見据える瞳は鋭くて。
「優里さん、ですか」
ふっと彼の口元が弧を描いて。
彼が浮かべた微笑に隣の母親が感心するようなため息をついたのが聞こえたけれど、これはそんないい笑顔じゃない。
笑顔なのに目が笑ってないように私には見えた。
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とも(プロフ) - おはようぉございます。正に嬉しくて号泣です。お互いの気持ちが繋がった。素敵なお話をありがとうございました。 (2020年12月12日 7時) (
レス) id: bd0ebe94fc (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - 柚さん» コメントありがとうございます！今回の更新でその気になった箇所をきちんと回収できていると思うので…楽しんでいただけたら嬉しいです。 (2020年12月7日 23時) (レス) id: 217cb95def (このIDを非表示/違反報告)
柚(プロフ) - いつも楽しく読ませて頂いています^ ^なんで息を呑んだのか気になりますねぇ(^-^)♪ (2020年11月24日 8時) (レス) id: c036a1a7fd (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - 橘花さん» 前のシリーズから！長く読んでくださってありがとうございます(*^^*)自信満々の翔さん格好良いですよね…あと二人も頑張ります！！ (2018年6月26日 11時) (レス) id: 00c99a5500 (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - まいさん» 強気×強気、良いですよね。まだまだ書き足りない事もあるので続編も考えてはいます(^-^)残りの二人も頑張りますね！ (2018年6月26日 10時) (レス) id: 00c99a5500 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：紫苑
| 作成日時：2017年3月15日 20時
