7. ページ14
立派な食事を前にしても気分が晴れることなんてなくて。
むしろ食べながら脳内では振られた時のシミュレーションが始まってしまう。
できるだけ冷静に、泣かないようにしなきゃ。
泣くのは一人になってから。
あとは、
「どうした？なんか心ここに在らずって感じだけど」
「…え？」
私にそんなこと言いながら笑んだ潤さんも、どこか緊張しているように見えて。
ゆったりとしたお店の雰囲気とは裏腹に私たちのテーブルだけ緊張感が漂っている。
「A、ちょっと聞いて欲しいんだけど」
潤さんがそう切り出したのはデザートが運ばれてきた時で。
遂にきた。
そう思ってしまったら手が震えだして、慌ててフォークを置いた。
「……なあに？」
「俺らが付き合いだしてもう4年近いだろ。始まり方は微妙だったし、どうかなって思ってたんだけど……」
もうそろそろかな、って
笑いながら告げられたその言葉の意図を考えたくなくて、ぎゅうっと目を瞑る。
「…これ受け取ってくれる？」
「へ？」
予想していた言葉と全く違ったそれに驚いて、目を開けたところで見えたのは綺麗な小箱。
「え？え？ええ？」
小箱と潤さんの顔を何度も見比べているとまた可笑しそうに笑われて。
小箱に手がかけられて蓋が開けられる。
「俺と、結婚してください」
潤さんすごい。
所作がいちいちキマっててドラマみたい…
なんて感想が浮かんだ後にようやく状況が飲み込めて。
ケッコン……て、え？結婚？？
私と、潤さんが？
その言葉は、ずっとフラれることばかり考えていた私には強すぎる衝撃を与えてきて。
嬉しいのかなんなのかよく分からない涙で前が見えなくなった。
「えっ？A？」
焦った表情の潤さんに、大丈夫？と聞かれても嗚咽が漏れそうで声は出せなくて。
「うれしくて泣いてる…ってわけじゃなそうだな」
そっかそっか、とちょっと悲しそうな声色でつぶやいた潤さんが指輪を仕舞う。
「俺ん家でゆっくり話そう。立てる？」
促されて席を立って、支払いを済ませて潤さんの車に乗り込む。
その間、潤さんは一切喋らなくて。
だんだん冷静になってきた私は、プロポーズされたんだとやっと事実を受け止めることができて。
きっとそう、昨日の美人との食事だって下見だったのかも。
……やっぱり私はあの指輪を受け取れない。
少なくとも今のままじゃ。
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とも(プロフ) - おはようぉございます。正に嬉しくて号泣です。お互いの気持ちが繋がった。素敵なお話をありがとうございました。 (2020年12月12日 7時) (
レス) id: bd0ebe94fc (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - 柚さん» コメントありがとうございます！今回の更新でその気になった箇所をきちんと回収できていると思うので…楽しんでいただけたら嬉しいです。 (2020年12月7日 23時) (レス) id: 217cb95def (このIDを非表示/違反報告)
柚(プロフ) - いつも楽しく読ませて頂いています^ ^なんで息を呑んだのか気になりますねぇ(^-^)♪ (2020年11月24日 8時) (レス) id: c036a1a7fd (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - 橘花さん» 前のシリーズから！長く読んでくださってありがとうございます(*^^*)自信満々の翔さん格好良いですよね…あと二人も頑張ります！！ (2018年6月26日 11時) (レス) id: 00c99a5500 (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - まいさん» 強気×強気、良いですよね。まだまだ書き足りない事もあるので続編も考えてはいます(^-^)残りの二人も頑張りますね！ (2018年6月26日 10時) (レス) id: 00c99a5500 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：紫苑
| 作成日時：2017年3月15日 20時
