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「大丈夫。拗ねてても可愛いから」
「へえー」
「うわ。全然響いてねぇ」
どっこいせと言いながら翔さんまで私の横に座り込んで。
高そうなスーツが汚れますよ、とか。
おじさんくさいですよ、とか何か言わなきゃいけないと思うのに言葉が出てこない。
「部屋行かね？ちょっと話したいんだけど」
いつも余裕たっぷりの彼から困った笑顔でお願いされたら頷きたくなってしまう、けど。
どうしても心に引っかかってる事がある。
「妹さんは良いんですか？」
「あ、え？何で知って…って、ああ松本か。もう帰らせたから、良いよ」
「でも、挨拶とか」
「良いよしなくて。ほら、」
ぐいと少しだけ乱暴に手を引かれて歩きながらも戸惑いが消えない。
帰らせた、挨拶しなくて良いって何？
タイミングの問題？それとも、紹介する気はないって事？
「じゃあ松本さんは、」
「しつこい」
混乱しながら更に言い募ろうとした私を、翔さんの不機嫌な眼差しが凍らせる。
いつも緩い笑顔を浮かべてくれていたのは何なのかと問いたくなるぐらい、表情が全くない顔に見下ろされて身が竦む。
「なに？俺と二人になるのが嫌なわけ？」
「はい！？何でそんな話に、」
「この前もそうだよな、俺が帰る前になんだかんだ理由つけて帰ってたし」
あんな言い訳すぐに嘘だって分かったんだけど？ と睨まれて心臓のあたりがすっと冷たくなる。
櫻井さんが言ってるのはあれだ、私が見慣れない洋服を見つけた日の事。
確かに下手くそな言い訳をして家に帰ったけど、あれは嘘じゃなくて。
いや嘘なんだけど、そうじゃなくて。
きちんと言葉にしなきゃいけないとわかっていても、普段とは違う翔さんの態度に頭はよく働いてくれなくって。
「その似合わない格好だってそうだろ。俺といるの嫌になった？」
”似合わない”
耳に届いたその言葉に胸がカッと熱くなって、翔さんの手を振りほどく。
「A？おい、」
翔さんが伸ばしてきた手を叩き払う。
ぱん、という乾いた音は思いの外よく響いてしまって更に動揺してしまう。
ああ、傷つけたかも。
痛そうな顔をした翔さんに申し訳なさもこみ上げるけど、もう抑えきれない。
「似合って、ませんか。……頑張ったのになぁ」
弱々しい声とともに溢れた涙が地面に染みを作るのが見えた。
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紫苑(プロフ) - りえさん» リクエストありがとうございます。『ハラグロなふたり』の続きですね。鋭意創作中ですので今しばらくお待ちください！ (2021年1月4日 13時) (
レス) id: 217cb95def (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - すずさん» コメントありがとうございます。赤菊の君の人気ぶりにびっくりしてました！喜んでいただけて嬉しいです。 (2021年1月4日 13時) (レス) id: 217cb95def (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - ゆっこさん» リクエストありがとうございます。潤くん視点のお話書かせていただきました！ (2021年1月4日 13時) (レス) id: 217cb95def (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - mihoさん» リクエストありがとうございます。Lapis lazuliの続きですね！承知しました。ただいま創作中ですのでしばしお待ちください！ (2021年1月4日 13時) (レス) id: 217cb95def (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - るきさん» リクエストありがとうございます。『赤菊』の翔さんサイドを書かせていただきました！大野さんのお話はもうしばらくお待ちくださいね。 (2021年1月4日 12時) (レス) id: 217cb95def (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：紫苑
| 作成日時：2017年1月23日 20時
