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2. ページ36

一度だけ、仕事中の翔さんを街で見かけた事がある。


もちろん声をかけられるような状況ではない事は分かっているから、遠くから彼とその周りの人を見ていただけなんだけど。


なんかふっと唐突に思ったんだよね。
ああ、大人だなぁって。

何だろう。
スーツとか着ているものもそうなんだろうけど、立ち振る舞いとか表情とかどれを取っても今の私とは違うところばっかりで。

何の覚悟も用意も無しに彼の傍に居させてもらえる事に甘えてて良いんだろうか。

そう考え始めたら羨ましさと情けなさで目が離せなくなって。

「先輩?」
「あ、ごめん」

一緒にいた大学の後輩に声をかけられてやっと視線を逸らす事ができた。


自分で言うのも何だけど、勉強はまあそこそこ。
英語と中国語は留学した時に勉強していたから喋れる。

今すぐにどうこう出来るものと言ったら、あとはそうだな。


「北川ちゃん、ちょっと頼みたいことがあるんだけど」
「なんです?」
「あのね、お願いがあって…」

モデルもやってる後輩は私のお願いを聞いた後、良いですねと頼もしく笑ってくれた。



私のお願いというのはなんて事はない。

今まで気を配ってこなかった服装と化粧についてアドバイスが欲しいって事。


詳しい説明はしなかったけれど、年上の恋人と一緒にいて恥をかかせない程度にはなりたいんだよねと言うとすごく睨まれた。


「良いですか?服装と化粧ってのは確かにそんな側面もありますが、一番は自分の好きなものを身につけるべきなんですよ。そうじゃなきゃ結局無理してる事になっちゃうんですから」
「そっか…」
「あとは武装ですね」
「武装?」

いや、何か物騒な言葉が聞こえたんですけど。

「邪な考えを持つ相手に対する威嚇という面もあります」
「威嚇…」
「私は背がそこまで高くないんでヒールは高めにしますし、リップの色も濃いめにしないと舐められるんで」
「モデルの世界って怖いんだね」
「ふふ、なのでビシバシいきますよ!」

目を細めてにっこり笑う後輩ちゃんは迫力があって思わず身震いしてしまう。


頼む人を間違えたかもしれない、なんて口にするのも控えるぐらい怖かった。




そうしてなんとか見た目を繕う事にも慣れてきた今日この頃なんだけど、別の大問題が持ち上がるとは思ってもいなかった。

3.→←臙脂色【S】1.



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紫苑(プロフ) - りえさん» リクエストありがとうございます。『ハラグロなふたり』の続きですね。鋭意創作中ですので今しばらくお待ちください! (2021年1月4日 13時) (レス) id: 217cb95def (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - すずさん» コメントありがとうございます。赤菊の君の人気ぶりにびっくりしてました!喜んでいただけて嬉しいです。 (2021年1月4日 13時) (レス) id: 217cb95def (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - ゆっこさん» リクエストありがとうございます。潤くん視点のお話書かせていただきました! (2021年1月4日 13時) (レス) id: 217cb95def (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - mihoさん» リクエストありがとうございます。Lapis lazuliの続きですね!承知しました。ただいま創作中ですのでしばしお待ちください! (2021年1月4日 13時) (レス) id: 217cb95def (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - るきさん» リクエストありがとうございます。『赤菊』の翔さんサイドを書かせていただきました!大野さんのお話はもうしばらくお待ちくださいね。 (2021年1月4日 12時) (レス) id: 217cb95def (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:紫苑 | 作成日時:2017年1月23日 20時

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