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舞台について雑誌で読んだ時に気になったのはもう一つ。
演じるサロメについてどう思うかとインタビュアーに聞かれたAの答えが俺の嫌な予感を加速させる。
『そうですね……色々な解釈がありますが個人的にはただの狂気染みた行動と言ってしまうのは可哀想な気がして。好きなのに相手は自分に興味なんて無い。首だけになった彼を見て、初めて自分のことを見てくれたと感じたのではないでしょうか』
その文面と微笑むAの写真に俺は見てはいけないものを見てしまった気がして直ぐに雑誌を閉じた。
目を背けちゃいけない。でも改めて俺の行動を考え直すには一人じゃ耐えきれない。
弱り切った俺は、俺とAの事を知ってる奴……大野さんのアトリエに転がり込んでこれまでの事をひたすら喋った。
喋ったといっても一方的に俺が話すだけで大野さんはずっと黙って手を動かしてた。
口を挟んできたのは俺がAからの好意に全く気付いていなかったと言った時。
「え?本当に気づいてなかったの?」
「うん」
「てっきり気づいてて無視してんのかと思ってた」
「おい、」
「人の感情に聡いはずのニノが気づいてなかったのは、ちゃんとAちゃんのことを見てなかったからじゃない?」
容赦のない指摘がぐさりと刺さる。
いてぇって。あんたそんなにズケズケ物言うタイプだったっけ?
「あんな健気な子そんなにいないよ?ずうっとニノのこと想ってたって言ってた」
「そんな話いつしたんすか」
「ニノん家で会った日の次の日…いやその次の日だっけ?細けぇことは忘れちったけど泣きながらしゃべってた。ありゃ限界だったんだろな」
「泣くってあいつが?」
この前Aが泣き叫んでたのを思い出して柄にもなく動揺して声が震える。
大野さんの前で泣いた?演技でも仕事でもなく?
ふざけんなと言いたくなるこの気持ちは、紛れもなく独占欲ってやつだ。
口に出したらふざけんなはどっちの台詞だよって間違いなく言われるから黙ってるけど。
俺、馬鹿じゃね?
独占欲とか…何様だって。
「ちゃんと考えてやんなよ?今までのことも含めて」
「わーかってますよ」
酷いことをしてきたという自覚はある。というかつい最近自覚した。
Aの笑った顔、泣いた顔と叫び声。
色々な顔が脳裏にフラッシュバックして俺を苛める。
「ちゃんと…考えますよ」
そう小さくつぶやくのが精一杯だった。
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紫苑(プロフ) - yukidarumakunさん» あとがきにも追記しましたが、この二人のその後を短編で書き始めました。ぜひ覗いてみてくださいね。 (2020年6月7日 16時) (レス) id: 217cb95def (このIDを非表示/違反報告)
yukidarumakun(プロフ) - ものすごく楽しみです!またこの2人に会えるのを楽しみに日々の生活頑張ります。こんな時期ですので御無理のないよう創作して下さいね。 (2020年6月6日 19時) (レス) id: b586aa50e6 (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - yukidarumakunさん» 労いのお言葉ありがとうございます。この後の二人については少し考えていることがあるので楽しみに待っていてください!続きを書いた時にはまたこちらでお知らせしますね。 (2020年6月4日 12時) (レス) id: 217cb95def (このIDを非表示/違反報告)
yukidarumakun(プロフ) - 完結お疲れ様でした。この後の2人も見たいですね。また、いつか続編読ませて頂ける日を楽しみたいしています。 (2020年5月31日 19時) (レス) id: b586aa50e6 (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - めぐぽん(*´・∀・)さん» コメントありがとうございます。楽しみと言って頂けて嬉しいです。更新頑張りますね! (2020年5月26日 23時) (レス) id: 217cb95def (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紫苑 | 作成日時:2016年12月14日 22時