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バスローブから建物内に設置されていた乾燥機で乾かし終えた衣服に着替えをすませた2人は、
雨足が弱まるのを待っていた。
どちらともなく、ベッドの上でまた同じように背を向け合って座り、ゆっくりと時間は流れていく。
会話はなかったけれど、今度の無言はAにとって気まずいものだとは思わなくて
無理に喋ることはせず、ぼんやりと聞こえてくる雨音に耳をすませていた。
すると、軽い衝撃と共に感じる重み。
そしてすぐ近くにある、人の気配。
沖田がAに寄りかかるようにして、背を預けていた。
Aの視線を受けても、沖田は特に何も言わない。
だからAも黙ったまま、寄りかかり返してみる。
触れている背中はほのかに暖かくて、安心する体温だった。
2人はそうしてお互いに寄りかかり合ったまま、動かなかった。
そういえばさっきから雨の音が聞こえない気がする、雨が止んだのかもしれないなとAは思う。
「A」
「なにアルか?」
しかし沖田に名前を呼ばれたことで、それを伝えるのはもう少し後でいいかと結論付けた。
「お前に叶えてもらう願いの3つ目をまだ言ってなかったと思って」
「そうだった、最後の願いになるアルな。
もう決まってるの?」
「……ああ」
そして沖田は、最後の願いを口にした。
「俺のこと、好きになれよ」
背を向け合っているから、沖田がどんな表情をしているのかは分からない。
発せられた一言
それは命令のようで、けれど懇願の響きを持っていて
そしてそれが最後にして1番の願いなのだと理解して。
Aは、胸が締め付けられるような気持ちになった。
*
ようやく雨も上がって、所々にできた深い水溜りを避けながら夜道を歩く。
送っていくと言った沖田と共にAは万事屋へと帰ってきた。
「よぅ、お二人さん。
随分遅いお帰りで」
「ぅわっ、銀ちゃんずっとそこいたアルか」
2階へ続く外階段を上った先、玄関の手前。
そこには張り付いた笑みを浮かべた銀時が待ち構えていた。
「あーそうだぜ、あれっきり連絡も一切つかねェモンだからもういてもたってもいられなくてよォ、
足音のひとつも聞き逃すまいと 寒空の下ずっとスタンバってたんだわこの寒空の下でな」
銀時はAの手を引くと、先に玄関へと入らせる。
その手はとても冷え切っていて、銀時の言葉に嘘がないことを示していた。
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ぽてうさ(プロフ) - ゆるさん» ありがとうございます!!書いててよかったってなる嬉しいお言葉です(*^^*)近い内に続編も公開予定なので少々お待ち下さい! (2020年5月2日 11時) (レス) id: d2b650a918 (このIDを非表示/違反報告)
ゆる - すっごく面白いです!早く続きが読みたいです!更新頑張って下さい!応援してます♪ (2020年5月1日 11時) (レス) id: 647e80459a (このIDを非表示/違反報告)
ぽてうさ(プロフ) - ついに総悟さん行動にでました(°口°)こちらこそありがとうございますです_|\○_ 作者としては優しい沖田総悟を書くのが難しくて苦労してます笑 (2020年4月7日 23時) (レス) id: d2b650a918 (このIDを非表示/違反報告)
鈴音(プロフ) - 総悟ぉぉぉーーーーーΣ(゚Д゚;≡;゚д゚)すみません荒ぶりました← 何だろう…何か…もう…ほんとありがとうございます(((語彙力 (2020年4月7日 21時) (レス) id: 737011c58c (このIDを非表示/違反報告)
ぽてうさ(プロフ) - 至恩さん» 久しぶりとなってしまった更新で、こんなコメント貰えるなんて本当に嬉しくて続きを書くモチベがぐんぐん湧いてきます!ありがとうございます(●´ω`●) (2020年3月14日 23時) (レス) id: d2b650a918 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぽてうさ | 作成日時:2019年2月6日 19時