【銀魂】逃げた子兎、支配する兎 6【神威】

20 ページ38

「大胆なやつ」

揶揄するような言い方に、Aはすぐに離れようとしたのを沖田に阻止される。

「なに、アルか」

「なァ、ここが本当はどこだか教えてやろーか」

「本当の……？」

しかし次の瞬間、沖田の次の言葉を遮るように唐突に着信音が響き渡った。

沖田は音の出処であるベッドサイドに置いた携帯を見やり、緩慢な動きでそこに手を伸ばす。

その間にもけたたましく着信音は鳴り続けている。

画面に表示されているのは、
着信：犬の糞

「なんでィ、土方のヤローか」

そう躊躇いなくぶちっと着信拒否。
しかしすぐさまもう一度犬の糞ならぬ土方から着信がかかってくる。

画面越しながらも出るまでかけ続けるという執念を感じた沖田は、舌打ちをしてから気怠げに応じた。

「へい」

『やっと出やがったな総悟テメェ1回ブチッたろ
いや、それはともかく お前今どこにいる？』

「何ですかィ急に犬のふ……土方さん。
なんか後ろも騒がしいみてーですけど」

『いぬのふ……？
お前と一緒に出掛けたはずのAがまだ帰ってこないって、万事屋のヤツが殴りこみに来てんだよ！
さっさと今どこに―――あっテメ何すんだこの『もしもし沖田くん！？！？』

漏れ聞こえた万事屋の言葉に反応したAを見て、沖田が通話をスピーカーモードに切り替えた。

「旦那ですかィ」

『そうそう、旦那旦那！！
ところで君今どこにいんのAと一緒なのていうかこんな時間になっても帰ってこないってどうなってんの！！？』

「うわうるさっ。
あーAとはまだ一緒にいやす「銀ちゃん私いるアルヨー」

画面越しの銀時に向かって、Aが横から声を出す。

「そもそも遅いっつっても、まだ20時前ですぜ。
そう騒ぐ程でもないでしょ」

『家のAは食い意地張ったいい子だからいつも夕飯前にはデケェ腹の虫鳴らして帰ってくるんですー。
つーわけでA！ 俺はお前をそんな不良に育てた覚えはねェぞ』

「育てられた覚えもないアル」

『このどしゃ降りにぶち当たって、帰るに帰れなくなったとかそんなとこじゃねェのか。
つかいつまで人の携帯使ってやがんだ、返せコラ』

返す返さないででひと悶着あったのだろう、激しい物音がした後
電話相手が土方に戻る。

『こっちは随分とひでェ雨風だが、お前たちの方は大丈夫なのか』

「土方さんの言う通りのことになって、Aと安全な場所に避難済でさァ」

21→←19

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す