刹那的オペレッタ【njsj】【knmc】 (ページ10)

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(あーあ、どうしようかしら。このままだと私、警察に捕まってしまうわ)

こんなにあの世に送ったのだから、最悪警察に捕まって、死刑かな。それは面倒だな、けれど逃げても仕方ない。
そう考えながら、立ち上がる、その時だった。

パチパチパチパチ。

背中が泡立つ。ぞっと、顔から血の気がひいた。振り向いてはいけない、そう本能で感じるような、そんな存在感。それを持っている相手に、気づかなかった。おそらくとても近い位置にいるその相手に、この私が！

「凄いですねぇ、全て貴女が？」

聞こえた声は、まだ少年と言ってもいいような声だった。少し幼げで、しかし竹を割るようなすっきりとした声。しかし、この威圧感だけは消えない。まるで人を呑むような、気を抜いたらすぐにでも取り込まれると言う危機感すら感じる雰囲気がひどく肌を刺した。
「ここに派遣したのは、全てうちの精鋭たちだったんですけど。いやぁ、凄いものだ。まさか全員貴女一人にやられているなんて」
しかも、なんの訓練も受けてないような女の子に。
そっと囁くように呟いた青年、おそらく青年はふと思い出したように笑った。
「そうだ、貴女が守りたがっていた女性たちはもう返しましたよ。まあ正直死んでも困らないんですけど、貴女が表社会での生存を懸けて戦ったことに報いないほど、僕も腐ってはいませんからね」
ほ、と息を吐く。そんな自分がおかしいのか、青年はまたおかしそうに笑い声を上げた。この緊迫感に、不自然なほど清楚な笑い声だった。全くアンバランスな穏やかさが恐ろしい。
「しかし、いいんですか？もう戻れませんよ、こんなに血の海を作り出しておいて」
そう男が聞いてくる。この場には不釣り合いなにこやかさだった。姿を見ていない、けれど絶対にこの男が笑っていることがわかる。なぜ笑えるのだろう、と不思議に思うほどだった。
「あれ？聞こえてますか？聞こえていたら僕の質問に答えてください」
答える義理はない。そのはずなのに、口が動いていた。
「人殺しに、普通も何もない」
「あはっ」
何故か、青年の笑い声が聞こえた。

「いいですねぇ！そういうの、僕も大好きです。異常者は異常にしかなれないんだから、普通を求めるほうが間違っている」

ねぇ、貴女。美しい人。

「僕と取引しませんか？」
「取引？」
「全て揉み消す代わりに、貴女は僕と一緒にくる。それだけで何もかも終わりますよ」