刹那的オペレッタ【njsj】【knmc】 (ページ3)

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空気をぎゅっと締めるような恫喝が刺さるようだった。びくりと震えた腕の中の小さな存在が隠れるように強く抱きしめてくるのを宥めながら、「なるほど」と冷静な部分が動き出す。金目当てではないこと。こいつらも雇われて私たちを攫ってきたこと。その雇い主が変.態爺、つまりは女好きか。大方、タイプの似た女性を捕まえて性ドレイにするのが目的か。それともあの少女のように痛ぶるのが好きなのか。考えても仕方ない。それでも頭の中はこちらも戸惑うほどに冷静だった。それに当惑を感じざるを得ない。
何故、こんなに冷静でいられるのだろう。いやそれ以前に、何故『こんな一大事』に私は思考の海に囚われないのだろう。きっとそれは心中にパッと咲いた『ある事実』によるものだというのはわかっている。けれどそれを呑み込むには時間が足りなさすぎる。
そんな心中の混乱の中、わかるのはただ一つ。
目を合わせないように下を向いた少女の青褪めた頬。震えて動けない社会人女性の握りしめすぎて色を失った手。泣くのを堪えながらも空気が既に泣いている女の子。
辺りを見回せばそんなやつれきった弱者たちがいる。性.的なことに敏感な異常者たちの悪戯に弄ばれそうになっている、きっとこんなことに巻き込まれなければ平和に生きていた女の子たち。ぐっと手に力が入る。脳の血管が波打つような音が聞こえる気がした。
「はーやーくーしーろー」
威圧感のある怒声をここまで自在に操れるのだから、オペラにでもいけばいいのにどうしてこいつはこんなところにいるんだろう。他人事のように考えながらそっと少女を引き剥がす。パッと私の顔を見上げた少女のまろい頬は濡れ濡れとしていて、哀れみすら感じさせる赤い目元が私に純情を訴えかける。その意思を噛み砕いて、目を閉じて。
そして、立ち上がった。
「っは、勇気あんな」
新しい女か？いーい女だなぁ、自分から贄になろうってか。揶揄うような声であったが、その色の中には驚きと感心があった。殴られていて腰を抜かしたように見えた女がまさか、自分から志願するとは思っていなかったのだろう。馬鹿にされては困るな、なんていつもなら思わないだろうことを思考のゴミ箱に突き刺して、にこやかに微笑んで見せた。何故だか、私の微笑みを見た男は狼狽えている。縋り付く少女の頬を撫でながら、出来るだけ甘い声音で言い放った。
「御託はいいからさぁ、早く連れて行ってよ。お兄さん」

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