異端種族 ページ2
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この世界には、人間の他に異端種族という生命体が存在している、らしい。
それは獣の姿を取れる人型であったり、野を駆け自然に生きるエルフであったり。世にも恐ろしい悪魔や、悪戯好きの妖精、御伽噺の吸血鬼。そして、神様の遣いと持て囃される天使様。
とはいえ、人間たちに迫害されて生きてきた彼らが姿を現すことはほぼなく。私たち人間とは違う世界違う国で生きているとか、いないとか。
本当かどうかは定かではない。ただ、「そういう種族がいる」という事実だけは存在する。日本で学生時代を過ごしたことのある人間なら、「異端種族について」と言われる教科書を渡され、情操教育として授業を受けるからだ。まあ、皆信じてはいないかったが。実際に会ったこともないし、多大なるフィクションと幻想に塗れたそんなものを信じられるほど、子供でもないのだ。
だから、異端種族という存在は迷信として語られ、名前だけが一人歩きしていた。
はず、であったのだ。
まさか、この歳になって高校時代の教科書を引っ張り出すことになるなんて、誰が想像しただろう。
家に運び込んだ天使の怪我の処置はてきぱきと行えた。昔、家で預かっていた従兄弟が大きな怪我をして帰ってくることが多かったのもあり手当の基本は頭の中に叩き込んである。昔取った竿柄がこんな時に役に立つとは、人生わからないこともあるものだ。
そんなことを考えながらも処置を終わらせて、天使の翼を当てないように仰向けに寝かせる。そしてここに引っ越して10年経つはずなのにロクに片付けていないダンボールから引き出した教科書。『異端種族について』と書かれたそれは、高校時代のものにしては真新しい。まぁ、倫理学の授業と同じで話半分に聞いていた科目の教科書なので当たり前なのだけど。こんなことになるのならばちゃんと聞いておけばよかったなんて、見当違いな考えを脳裏に反芻させながらパラパラ捲る。
(あ、あった)
天使族についての記載の載ったページに辿り着いて目を通す。
【天使族、神の遣い、神と人間の仲介役、霊的な存在。天界から遣わされた「それ」は、神の意志を伝えるものである】
・・・・・・大体、そんな感じ。小難しい言葉に乗せて何行も使って説明しているが、要約できてしまうほどの内容の薄さだった。
存在することは分かっていても、何もわからない。それが異端種族というものなのだと再確認してしまう。
そんな存在が何故自分の目の前に現れたのか。
そればかりが頭の中を回っていた。
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、 - この作品に一目惚れしました!!!更新頑張ってください!待ってます!! (6月11日 22時) (レス) id: b2a72ce1c2 (このIDを非表示/違反報告)
海月(プロフ) - コメント失礼します。少し前から拝読しているのですが、仕草や声の一つ一つに自然の意思が宿るような、人ならざる描写が美しく、惹きつけられました。今後二人がどのように交流していくのかが楽しみです。どうか作者様の無理の無い範囲で執筆頂ければ幸いです (4月22日 2時) (レス) @page24 id: 9675cfd2c8 (このIDを非表示/違反報告)
ある(プロフ) - 更新本当にありがとうございます!!ずっと楽しみにしておりました、作者様のペースで進めて頂けると幸いです! (4月21日 23時) (レス) @page24 id: 7187551de4 (このIDを非表示/違反報告)
ペペロンチーノ(25)(プロフ) - 更新待ってます! (2023年4月16日 15時) (レス) @page23 id: c1a1942ea9 (このIDを非表示/違反報告)
kukiwakame0318(プロフ) - 展開が気になり一気見してしまいました、更新楽しみにさせていただきます (2023年1月25日 12時) (レス) @page23 id: b21d4039aa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:プロシオンの烙印 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/6zp7JIEaL24NfiM
作成日時:2022年10月3日 16時