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淡雪がちらついて冷たい風が鼻を突く。
身の入らない日々が続いた挙句、なんやかんやで今日、お見合いの日が来てしまった。
カイロで指先を温めながら、敦くんに任せちゃった残りの仕事大丈夫かなとか、乱歩さん不機嫌だったなとかいつもより社の皆の事が浮かぶ。
この流れで結婚まで、行くのかな。
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「外は随分寒かったでしょう?今さっきお茶を淹れてもらったばかりでして、身体に沁みますよ。」
『ありがとうございます』
温厚そうな、目尻の下がった気の利く人。それが第一印象だった。彼は私が思っていたよりもおっとりした人だ。
この人があんなに熱烈な手紙を書いていたなんて。
『あ、えっと、お手紙出してくださってありがとうございます。とても……嬉しかったです』
「貴方にそう言っていただけるとは、恐れ多い。少し強引すぎてしまったと思ってはいるんです。」
少しっていうか結構ですけど。
暖かい深緑色のスーツ姿で、少し照れたように笑った。
彼、小林さんは市警の人で、乱歩さんに連れられて事件の捜査に行った私に一目惚れをしたらしい。
「…うん、やっぱり貴方は素敵な人だ。突拍子もなくてすみません。」
『あ、ありがとうございます…』
「ちなみにご結婚とかは考えているのですか?何かご希望などあるのでしょうか」
結婚。
その言葉で連想するのと言ったらやはりポオさんの小説に入り込んだ事だ。悲しい話だったし迚切なかった事を覚えている。
『そう…ですね、私は、2人で愛し合えてれば満足だと思います』
嫌に乱歩さんが頭にチラつく。そういえばあの事件から彼はつくづく私に構いたがる。皆に迷惑かけてないだろうか。
といってもいつも面倒見てるのは私だけど。
「理想の男性像はあるのですか?出来れば貴方の理想になりたい。」
『理想…ですか』
国木田さんは理想の御相手の事を手帳に書いているそうな。何だかんだいって女性より男性の方が好みとかタイプとか気にする気がする。
そういえば乱歩さんは長年一緒にいるけど何も聞いたことがない。強いていうのであれば式に大きなケーキ、という事だけ。
恋人が僕の好みだ、とか云いそう。
乱歩さんのくせに素敵。この野郎
「あの、二葉亭さん…?もしかして気に触る質問でしたか…?」
『え?あ、嗚呼いえすみません、あんまり想像つかなくて』
もしかして顔強ばってたかな。気を遣わせた?
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ゅ - 1話の太宰さんの下の方から潰された蛙の様な声がするで笑ってしまいました、笑 (4月22日 14時) (レス) @page2 id: 74e0460151 (このIDを非表示/違反報告)
ふわふわありす(プロフ) - 初めまして。完結おめでとうございます!私は正直なところ今まであまり乱歩さんを意識したことがなかったのですが、この作品で沼にドボンしました……有難うございます!お疲れさまでした。 (4月9日 23時) (レス) @page42 id: d368e0b18f (このIDを非表示/違反報告)
よる(プロフ) - 梅原さん» わわ、嬉しいです!一緒に乱歩さんの沼にはまり落ちましょう……!! (2023年2月20日 19時) (レス) id: 05f2309d58 (このIDを非表示/違反報告)
よる(プロフ) - モンブランさん» わー!嬉しい!ありがとうございます💕なかなか喋らせるのに苦戦してます…笑笑 (2023年2月20日 19時) (レス) id: 05f2309d58 (このIDを非表示/違反報告)
梅原(プロフ) - アニメ見て乱歩さんいいなと思っていた時にこの小説に出会いました。久々に面白いものが読めてテンションあがりました。。。 (2023年2月20日 19時) (レス) @page32 id: ecb93650e6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小榛 | 作成日時:2023年1月8日 11時